ADP雇用統計と労働省非農業部門雇用者数変化

ADP雇用統計と労働省非農業部門雇用者数変化
21:30 (米) 6月 非農業部門雇用者数変化 [前月比] 33.9万人 22.5万人 20.9万人
21:30 (米) 6月 失業率 3.7% 3.6% 3.6%
21:30 (米) 6月 平均時給 [前月比] 0.3% 0.3% 0.4%
21:30 (米) 6月 平均時給 [前年同月比] 4.3% 4.2% 4.4%

またしても釈然としない雇用統計の数字が出た。というか統計のデータ収集の方法を変えたはずの雇用統計と木曜に発表されたADP雇用統計との落差は一体どういうことなんだ?という気がするんだよね。

21:15 (米) 6月 ADP雇用統計 [前月比] 27.8万人
(26.7万人)
22.8万人 49.7万人

雇用統計とは米国労働省労働統計局の発表するもので、今回は特に政府系雇用も加味されたものだったはず。一方ADP雇用統計は給与計算のアウトソーシング企業であるADP社が調査する民間の非農業部門雇用ということで、この二つが今回のような差異があるのは、明らかにおかしい。

Advertisement

雇用統計は「全米の約16万の企業や政府機関のおよそ40万件のサンプルを対象に調査」しているのに対しADP雇用統計は「約50万社の顧客を対象に毎月雇用者数の動向を調査したもの」ということで、民間企業のみが対象となっている点が相違点としてあげられる。

以前より指摘されていることだけど、労働省の雇用統計は調査機関が毎月約1週間と決められていて、その期間内に聞き取り調査を行っているということで、信頼性の観点で疑問が残ると言われていてADPは受託する給与計算の数から増減を割り出しているわけで、数字そのものの正確性は問題ないと見られているけれど、どちらの統計調査も重複労働という問題を雇用数として処理してしまうところが欠点と言われている。つまり1人の労働者が3カ所で掛け持ちをしていれば3人とカウントされてしまうのだ。

Advertisement

そういう意味では発表された数字の重複労働に関する条件は同じなので、今回のような差異が出た場合には、どちらか、または両方の統計の調査方法が現実を反映していない物である可能性がある。

そして両方の統計をみて考えられることは、労働省の雇用統計は製造業の比率が高く、ADP雇用統計はサービス業の比率が高いという事以外にない。6月製造業PMIは46.3、6月ISM製造業景況指数は46.0だったのに対し、6月のサービス部門PMIは54.4、6月ISM非製造業景況指数も53.9と大きく乖離しているからだ。

Advertisement

さてそうした発表をうけて相場がどう反応するのかが見ものだけれど、10年物国債金利はさらなるFRBの利上げを想定した動きになっている反面、ドル円は¥143台前半まで円高が進んでいるので、全く予想がつかないけれど、基本的にはFRBの利上げを後押しする数字であることは間違いない。

米国経済は製造業は非常に厳しい状況を迎えつつある一方、サービス業は全く悪化していないという、現状が見て取れるけれど、そのサービス業も個人消費次第ということに変わりはないので、つまりはサービス業に陰りが見え始めるポイントが本格リセッションの始まりだということは十分に予想できることだと思うけどね。

その意味ではやはり秋口辺りが(リセッションの)スタート地点になると、個人的には確信を持った今回の雇用統計だった。