大荒れ!10月相場は異形の動きへ!為替はドル売りの可能性も
- 2023.10.04
- トレード雑感
10月相場に入った途端、何とも激しい相場展開になった、というか、まさに大荒れという表現がふさわしい様相を呈し始めた。株価が下落したからといって大騒ぎで危機感を煽っても仕方ないことだけど、連日寝付けなくて夜間の米国市場の動きをつい追ってしまう。そして今回の株式相場の動きに多少違和感を感じつつも、いよいよ蟻の一穴から土台が揺らぎ始めたかな?という危険な可能性をどうしても感じざるを得ないのだ。
ここ数日、米国市場で決定的なトリガーとなるような、倒産や金融事故が起こったわけでもなく、FRBが公式にさらなるタカ派発言を繰り出したわけでもない。米国の景気指標とて、例えば2日の8月製造業PMIは改善傾向を示し、明日発表予定の非製造業PMIも減少傾向とは言え依然53.5という好調な予想が出ている。そして今夜のJOLTS(雇用動態調査)の8月分は7月の880万件から961万件と大幅に増加しているわけだが、これをして利上げ圧力が増加したと市場は無暗に判断しないだろう。
だがしかし、問題なのはどうにも止まらなくなってきた米国債金利の上昇で、10月1日ギリギリで暫定予算を可決した米国議会をみて、債券市場はある意味失望したという感じで、10年物国債金利の上昇に拍車がかかってしまった。
ここが、自分が思う米国経済のアキレス腱というか、この状況こそが「蟻の一穴」になり得るんじゃないか?と考えるポイントなのだ。
景気をコントロールするためには、金融政策と財政政策の一体化が必須だ、と言うのはアベノミクスが始まって以来日本で頻繁に議論されていたこと。いくら黒田バズーカで金融緩和しても、財政が同調しなければ意味がないわけで、日本では同調どころか消費増税をして、金融緩和効果をぶち壊しにしてしまった。日銀と財務省が相反した政策を延々と続けてきた結果、日本経済の成長は微々たるものだった。
米国経済の堅調な成長はコロナ禍までは、金融と財政の同一志向の上にもたらされていた。しかしここで、緊急措置とは言え政府当局が過剰に財政規模を拡大し、給付金をバラまきまくった結果、そこにある種の油断が生まれた。それまで急激なインフレは有り得ないと考え、政府はいくらでも国債発行をして財政規模を拡大でき、経済を維持すればよいという意味不明の理屈がまかり通るようになっていた。
だからこそ、FRBや財務省は2021年にインフレが始まったとき、「年内には収束する」という根拠のないコメントを連発したわけだが、年末に近付いてもインフレ鈍化傾向は一向に見られなかった。この間、何とFRBは金融緩和(低利・QE)を継続していたわけだよ。
翌年ロシアがウクライナに武力侵攻を開始し、同時にエネルギー価格が暴騰し始めた2022年3月になってFRBはようやくQEを中止し、利上げに転換したというお粗末ぶりを露呈した。そこから、急激な利上げを開始し、半年ほど遅れてQTの本格導入を行い、インフレ抑制の名目で強烈な金融引き締めに転じたわけだが・・・。
この間にバイデン政権は財政の急拡大を一向に止めようとはしなかった。というか痴呆が明らかなバイデン大統領にそうした判断は不可能で、政権ではイエレン財務長官の「大規模な財政支出拡大とFRBの金融引き締めは両立しうる」「ソフトランディングは可能」とする方針が大きかったし、前FRB議長がそういうなら、と民主党はひたすら選挙対策のために予算を積み上げ続けた。
ここ2年間、米国では財政というエンジンはを吹かすけれど、ガソリン価格は高金利で高価です、という金融政策、つまりは財政と金融が背中合わせになるという政策を続けてきた。FRBは金融引き締めとQTによってマネタリーベースを縮小する方向へ舵を切ったわけだが、米国政府は依然として大型予算を連発し、財政拡大路線を続けてきたわけで、ここにきて完全に財政と金融の政策不一致が、米国経済やマーケットに数々の矛盾を生じさせたと言える。
FRBの金融引き締めは、急激なインフレを鎮静化させることには成功したが、いまなお2%という目標値には程遠い状況。2022年末には失業率は4.5%になるという予想は完全に外れ、いまだに3.8%という極めて堅調な雇用を維持し、賃金は上昇を続けている。結局のところ、FRBの金融引き締めは一部の金融機関の破綻は招いたものの、インフレ対策は完全に踊り場に差し掛かっている。
その要因は一向に衰えない個人消費にあり、それは米国財政当局が大盤振る舞いを続けていることに大いに関係する。連邦最高裁で違憲判決が出て、学生ローンの免除と返済猶予の中止が決定されたわけだが、10年20年とかかる多額の返済は免除されると誰もがこの7月まで思っていた。
また景気後退は終わり、リセッション入りは回避できると発言しているイエレン財務長官や、そうした方向でミスリードを演出しているウォール街の影響で、FRBのパウエル議長さえもソフトランディングだろうという見解を示すに至って、米国民は消費を抑制することはなかった。
しかし大方の米国民は貯蓄は底をつき、カード使用残高は急激に拡大している。そこをFRBの高金利政策が直撃し、リボ払い比率が極めて高いクレジットカード金利は20%を超え、住宅ローン金利、自動車ローン金利も完全に高止まりし、賃金の上昇はまったく追いついていない状況・・・。
金利の急激な上昇にもかかわらず、年率20%を超える金利負担を分かっていて、クレジットカードを使いまくる米国国民のセンチメントを誘導したのは、米国政府でありウォール街であり、さらに言えば「職はいくらでもある」という堅調な労働市場にある。
しかし、求人数が増加するということは、それだけ労働力不足が生じているという意味でもある反面、離職者が非常に多いという意味でもある。労働参加率が増加しているにもかかわらず求人件数だけが急激に増えるということは、好景気と言うよりはむしろ危機感なのではないか?
命の危険さえ頻発する今の米国社会で小売業に職を求めるのは、マイノリティだけだろう。それも急増した移民が大半なのではないかな。
そうしたことを含めて、今の米国経済は、好調に見える景気指標と実体の乖離が急激に進んでいる。株高はS&P500もNASDAQも一部のテック企業の比率が高いことが極めて問題だ。
にもかかわらず、来年大統領選挙を控えたバイデン政権は、財政出動の拡大を辞さない構えである。6月債務上限をほぼ無制限に拡大し、10月から始まる新年度予算に関し暫定予算をギリギリで通過させた。その意味は、短期国債で膨張する予算を賄った結果、その長期債への借り換え需要と多額の国債償還が待っている、2023年~2024年をさらなる国債発行で賄う以外に道がない。
その状況を見れば、FRBの金融引き締め論さえも陳腐なものになりかねない。ムーディーズは暫定予算が可決されず政府機関が閉鎖に追い込まれれば米国債の格付けを行わざるを得ないと表明していたが、それは真逆の判断だろうと思う。いまの米国債の状況からして、米政権が一向に予算拡大を抑制しないことこそ、格下げの対象なのではないか?という債券市場の判断が透けて見える。
今夜米国債10年物金利は4.821pまで急激に上昇した。ドル円は財務相の介入があったかのように¥150タッチ後急激に¥147.38まで動いた。レートチェック報道もなく真偽は不明ながら市場は「財務省の介入」と断定している。ならば、瞬時に¥148台を回復したことを考えると、介入効果が継続するとは思えないドル円の動き。
こうした米国経済の数々の矛盾が、米国政府と金融当局の政策相反という「蟻の一穴」が、債券、株式、為替の各マーケットの土台を揺るがす10月ということになる。
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