STAND BY ME ♪ by Ben E King

STAND BY ME ♪ by Ben E King

別に自分自身の過去の体験と被るということはないのだけれど、なぜか、そう30年くらい前、日本中がバブル崩壊の後遺症で経済再生どころか、何をしてもどんどん悪くなっていくような、そんな地獄のような世相のなかで、何度もこの曲を聴いたんですね。

とにかく日本中すべてが悪い方へ進んでるのが見える。そんななかでもちろん仕事をしてたわけだけど、何をやっても先が見えないというか、もう少し頑張ればなんとかなる、という希望がない。とにかく今を凌ぐ。目先をなんとかやり過ごす。二人目の娘が出来て、さぁ頑張るぞ、という気持ちに普通ならなれると思うけど、そんな些細な前向きな気持ちを持っても、翌朝出勤すると現実の泥沼に戻された。

今になって、その時のすさんだ気持ちを思い出すと、それが一生の後悔だと改めて感じます。父親らしく愛情をもって接しなければならない時に、気持ちがすさんでる。子育ては申し訳ないけれど女房に投げて、とにかく何とかしないと未来がない、みたいに考えてしまう。別に仕事を言い訳にして子育てを投げ出したわけではないし、でも金縛りにあったように、何も出来なくて、毎日押しつぶされそうになりながら、深夜まで仕事してたなぁ。当時を思い出すと、こんな悲しいことは他にないな、と思いますよ。

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そんな日々の中で何度か聴いたこの曲。一度聴けば忘れない簡単なメロディ。深夜仕事帰りの車中で気が向くとCDをかける。何故か猛烈に涙が噴出してきて・・・。そういう日は、帰ってこっそりと二人の娘の寝顔を除くと、優しい気持ちになれた。起きてきた女房に「何泣いてるの?なにかあった?」と言われても応えようがなかったね。

それから10年経って、本当に何もかも失くしてしまったとき、女房も娘たちも去って行ってしまった時、どうして自分の気持ちをもっと伝えて遣らなかったのか、と今でも後悔してます。何とか食えるようになってからも、そして必要なだけいくらでも援助すると言えるようになってからも、本当の気持ちは伝えられていない。

誰しもが大なり小なりそういう思いを抱えて生きているのだろう、ということは分かっていても、自分のことになると歯がゆいんだよね。過去は取り返しがつかないものだけど、みんな大人になって懸命に生きてる。それだけが救いです。

音楽や本、映画でもドラマでも、人の心を支える力のあるもの、生活の1シーンを救ってくれるものは、ほんとに大切です。いま、この曲は人生で出会った中でももっとも大切な一曲になってます。