ジャクソンホールのパウエル講演は米国経済の終わりの始まり!?

ジャクソンホールのパウエル講演は米国経済の終わりの始まり!?

納得できない点がある。

「調整の時が来た。方向性は明確だ」

今夜のジャクソンホールでのパウエル議長講演は、9月利下げ入りを明言する内容で、事前に大半が予想していたこと。にもかかわらず、直前までにドル円は¥146.49まで円安方向に動いていた。というかここ数日、¥145割れは有ったものの、すぐに円安方向への動きとなり、結果として日本株下落の強烈な抵抗線となり続けた。

しかも当日になっても、いや直前になっても、反応しさえしなかった。冗談じゃない、事前に織り込んでいるはずが講演と同時に¥144.59まで一気に突っ込んでくるとは・・・。ドル円がこうした動きになったことで、日経CFDは当然のことのように一気に下落して行った・・・。

そして現時点(2:40am)ドル円は¥144.535まで来ている。

 

まさかドル円も株式市場もこんな見え透いた動きをするとは・・・。

Advertisement

 

パウエル議長の発言は、余りに労働市場の悪化を強調し過ぎていたし、景気後退に関してダイレクトな発言過ぎた。同時に米国市場が予想している年内利下げ、をほぼほぼ肯定したと市場は受け取ったのではないか?

そしてこれは確実に米経済の「ソフトランディング」の想定ではない、と言うことになる。巷間言われているように米経済がソフトランディングするならば、こんな利下げ予想は出ないはず・・・。

とは言えパウエル議長は、「物価上昇率が持続的に(目標の)2%に戻るとの自信を深めている」「政策金利を適切に縮小すれば、力強い労働市場を維持しながら2%の物価上昇率に戻ると考える十分な理由がある」と株式市場暴落に配慮したような、フォローをすかさず入れてはいるが・・・。

 

これで日米株式市場は、9月6日(金)発表の米国8月雇用統計で決定的になる。パウエル議長が翌月のFOMCの方針をここまで明確かつ確定的に発言するというのは、ジャクソンホール講演をフォワードガイダンスとして強烈に意識した証拠だろう。

米国大統領選挙イヤーなのだ。できれば選挙に多大な影響が出るような金融政策の変更は避けたいところ。にもかかわらず、ここまで用意周到に利下げに対し積極発言をしてくる・・・。これをどうとるかは各々の投資家次第だろうと思う。以下は完全に個人的な考え方なので、読み流して欲しいのだが・・・。

Advertisement

 

そもそもフォワードガイダンスをやるようになった理由は、バーナンキ時代にFRBの金融政策が急激に市場のボラティリティを高めてしまう事に対する対策として取り入れられたことによる。本来FOMCの2週間前からブラックアウト期間に突入するため、政策当日までは様々な思惑が鬱積することになり、発表とともに一気に爆発することが常だった。

なのでイエレン時代になると徹底してフォワードガイダンスが行われるようになり、パウエル時代には地区連銀総裁達だけでなくWSJの記者であるニック・ティミラウスを使って直前にほのめかすような手法を獲るようになった。しかし、事前リークという指摘もあり、最近ではこの方法は行われなくなったが・・・。

だが今回、パウエル議長はジャクソンホールで金融政策の明確な変更を示唆するどころか「明言」するに至った。「調整の時が来た。方向性は明確だ」と言う言い回しは明らかに強烈なインパクトを感じさせるもの。またパウエル議長はジャクソンホール公演に先立って「商業用不動産によっていくつかの銀行は確実に破綻する」という発言をした。これもある意味ではフォワードガイダンスの一環と言える。

Advertisement

勿論、イケイケの米国市場なので、今夜のパウエル議長講演の内容で、株価が暴落するようなことはないと思うし、VIXも小動きのまま16台という低水準を維持している。とにかく米国市場の投資家は、28日のNVIDIAの決算を見るまでは動きたくないのだろう。

けれどもAIバブルはすでに終了したことはまず間違いない。NVIDIAが良好な決算発表になろうとも、今までのように市場を牽引することはなく、あくまでも1個別企業の決算というクールな見方をするはずである。そしてむしろNVIDIAの決算が良ければ良いほどに、テック企業が莫大な投資が必要でマネタイズ出来ないことへの不安が増幅されかねない。

してみると、まずはNASDAQ市場が28日(水)を起点として不穏な動きになる、そして9月6日(金)の雇用統計ではS&P500とダウが強烈な反応を示すはず。それでも本格的な暴落モードに突入するきっかけは商業用不動産関連の破綻劇ではないか?と思う。非常に気になるのは米国大手不動産向けノンバンクである、ブラックストーン(ブラックロックの母体企業)、スターウッドキャピタル、ラダーキャピタル、そしてアポロ・グローバルやカーライル辺りも深刻な状況に陥っている。

(最近ブラックロックの強引な投資手法が多くなったのは関係があるかもしれない)

パウエル議長が「いくつかの銀行」の前に商業用不動産向けノンバンクが火を噴く可能性の方が高いかもしれない。そうなると、サブプライムショックでのAIG(世界最大の保険会社)の実質的な破綻のようなものである。

Advertisement

ここで個人的に注目しているのは、FRBパウエル議長が懸念しているのは、本筋は雇用の悪化ではないということ。随分と勝手な想像になってしまうけど、パウエル議長が懸念する主軸はあくまでも米国金融システムと債券市場なのではないかと思う。雇用は確かに悪化するけれど、商業用不動産融資がもたらす金融市場への影響や、米国債の投げ売りによる金利の急騰と流動性の悪化をむしろ最大限に懸念しているのでは?と思う。

そして、恐らくパウエル議長の懸念が現実のものとなる、と個人的には観ている。雇用は悪化し続けるとは思うけど、常に雇用自体は粘着性もあり急速には悪化しない。それよりもむしろ、金融の事故が多発することによるセンチメントの悪化が結果的に失業率を加速させてしまうパターン。

こうなってくると、株式に投資する人はこれから最大限身構えるべき時が来た、と言えるのではないか?今夜のパウエル発言はあまりにも強烈過ぎた。

他にも表面化していない中国関連への投資の失敗や、不穏な原油価格、なぜか金価格が最高値を更新していることなど、疑い出したらキリがないが、そもそもどれも普通ならば大いに疑うべき懸念なのである。

世界の投資家は米国経済だけが頼りだった。米国の主要投資家はテック株を処分しているし、そもそもCEOは持ち株を手放しているのだ。彼らは確信しているに違いない。その米国経済がダメだと分かった途端に何が起きるのか?をこの週末はじっくりと考える必要があると思う。

ドル円が止まらなくなってきた(3:00am、¥144.146)

Advertisement