2025年の米国経済は本当に強いのか?
- 2025.01.04
- 海外情勢
昨年(2024年)で個人的に最も驚いた、というか感心したことは、米国経済がリセッション入りすることなく、結果的に米国市場が崩れなかったことに尽きる。特にこの高金利の中で、個人消費があり得ないほどの強さを見せたという点で、尋常ではない米国人の消費性向に呆れるほどだった。
勿論2025年が明けても、個人(消費者)の経済状況は日本人の感覚からすれば、アンビリーバブルな状況が継続中だ。個人の貯蓄率は市場最低水準に近いし、貯蓄額も減り続けている。クレジットカードは毎月限度額と格闘しているし、その金利も20%近いほとんど昔のサラ金並み。住宅ローン金利も相変わらず7%~10%の超高金利が続いているし、自動車ローンも同様金利の上に新車価格は鰻登り。インフレが3%台半ばと言ってもあくまでも前年比なので、すでに4年前からすれば複利で物価は上昇していることになる。こんな状況で「消費は好調」というのだから恐れ入る。
去年盛り上がった生成AIブーム。NVIDIAがブームを牽引し、今年は輪をかけてハイテク各社の投資が増えるという。早速マイクロソフトは今年6月までにAIの高度化やデータセンター建設のために12兆円以上の投資を行うと発表した。あまりにも巨額な投資を短期間で行うということに驚かされるけれど、もはや米国のテック企業にとってAIに関しては日本円換算で「兆」という単位の投資は当たり前になってる。
そのAIの進化という意味では現段階は第三コーナーを回った状態と言われている。仮に人間並みの思考力を凌駕するのも時間の問題と言われていて、おおよその目途は立っているということだ。また外せないのが量子コンピューティングで、量子ビットのノイズ対策も目途が立ち始めていることから、いよいよ本格運用が始まるところまで来ている。
こうなってくると、半導体関連はNVIDIAに代表されるGPUだけの問題ではなくて、高速な記憶装置や基盤も含めたパッケージ技術、データセンター運用のための冷却技術や大量の電源供給のためのインフラ整備等々、また高速なデータ転送を含めた通信技術の高度化とあらゆる方面の波及効果がいよいよ本格的に開始されるという段階になったと思う。
こうしたイノベーションが新たな市場を作り出し、投資が集中する新たな環境が生まれるところが米国経済の凄さを表しているとも言える。今年はAIが米国経済を刺激し続けるという期待感と、個人消費の行き詰まり感がせめぎ合うような年になるのだろうと思う。そしてその中で、トランプ政権が如何に経済を運用するかが相場の行方を左右するのではないかと考える。
反面、同時進行で商業用不動産の債務処理が行われるとも思っていて、規模によっては株式市場にも相当のノイズが入る可能性は否定できないけれど、不動産市況の悪化が大暴落を招くというようなこともないと思う。なぜならAIという有望な投資分野が存在するからだ。ただしトランプ政権は簡単には不動産を諦めないのは確か。そこはFRBとの連携を強化するはずで、「大いなる無駄」とイーロンマスクが指摘したエコノミストだけで数百人を抱える過剰すぎる体制(FRBと12連銀の職員数は20000人以上とされる)の合理化を武器に干渉を強めるはずだからだ。
昨夜の米国市場は数日の下落の後、大きな戻りとなった。結局株式市場もトランプの大統領就任までは、方向感が持てない状況であることは確かだと思うし、まずはウクライナーロシア問題をどうするのかに注目が集まるはずだ。けれどもイスラエルとなると話は別で、報道がなく情勢は掴めないものの、シリアを巡る情景は日に日に悪化していることが、原油価格の推移で分かる。シェールを強力に推進するトランプ政権誕生前にWTIが$74を超えてきたことは、新たな懸念を示唆している。原油高はインフレを高止まりさせる・・・。
ということで、2025年の米国経済はどうなるのか?と予測しても現時点ではあまり意味があるとは思えない。AIだけで支えられるとも思えないが、米国国民の消費に対するセンチメントは日本人には容易に測れないので、現時点では景気悪化を簡単には想定できない。ただし株式市場が過熱していることは確かだと思うので、悪材料を織り込みやすいのではないかな。
ちなみにChatGPTでは「2025年米国経済の懸念は?」と聞くと以下のような答えが返ってきて、まるでどこかのブログのようで思わず苦笑した。
2025年の米国経済に関して、以下の懸念が指摘されています。
- 通商政策の影響: トランプ次期大統領が全世界からの輸入品に対して一律の関税引き上げを計画しており、これが米国経済に与える影響が懸念されています。
- インフレ圧力: 関税引き上げや労働供給の制約により、インフレ圧力が高まる可能性があります。
- 政策の不確実性: 新政権の経済政策の方向性が不透明であり、これが企業や消費者の信頼感に影響を与える可能性があります。
- 財政赤字の拡大: 減税や規制緩和政策により、財政赤字が拡大するリスクがあります。
- 労働市場の逼迫: 移民政策の変更により、労働供給が制約され、労働市場の逼迫が進行する可能性があります。
これらの要因により、2025年の米国経済は多くの不確実性とリスクに直面していると考えられます。
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