米英貿易協定合意、まぁまぁ出来レース。米国経済への影響は微妙?

米英貿易協定合意、まぁまぁ出来レース。米国経済への影響は微妙?

いつものように無理難題を吹っかけて、ディールに持ち込み、有利な条件を引き出そうとするトランプ流のやり方がさもさも功を奏したように見える米英貿易協定合意。先ほどWHでの会見で発表されたわけだが、何がどうなるのか、ほとんど分からなかった。

要するに「英国は米国からの輸入品の税関手続きを迅速化し、農業、化学、エネルギー、工業製品の輸出に関する障壁を削減する」ことになるらしいし、米国は「米国の輸出、特に農業分野における市場アクセスが数十億ドル拡大する。米国の牛肉、エタノールなど、米国の優れた農家が生産するほぼすべての製品のアクセスが、劇的に拡大する」らしい。

けれども詳細はこれから数週間の交渉により決定するという事らしいし、農産物に関しては数十億ドル拡大すると風呂敷を広げたけれど、そんなことはまずあり得ない。なぜなら英国はほぼすべての農産物をEU圏から輸入しているわけで、遠隔地からの物流コストを考えただけでも確実に現在の方が安価なのだから。

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では米国が英国からの輸入が増えるのか?と言えば、英国には米国に輸出するものはほとんどない状況・・・。和やかな雰囲気での合意発表となったけれど、英国人はこの国辱のような協定合意を忘れないだろうねぇ。

そしてこの協定合意は、裏を返すとEU諸国と英国の貿易を横取りする格好なわけで、まともにEUに喧嘩を売ったも同然。現時点で英国に農産物を輸出しているEU各国は、どう思ってるだろうねぇ・・・。結局のところトランプの唱えるMAGAは理不尽な要求を突き付けて、米国の利益を実現すること、なのかな。

まずは同盟国というか母国でもある英国と協定を結んで見せて、そのことをアピールして他国の交渉を有利に進めたいという意図がある。同時期に日本ともこうした合意発表をしたかったのだろうけど、赤沢大臣がなかなか色よい返事をしなかった(権限がなかった)。そこでベッセントは関税交渉を持ち出して加藤大臣とやると圧力。それでもお茶を濁して帰国した赤沢大臣。ということで日米の協定合意はいまだに妥協点は見いだせていない。

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仮に日本が英国と全く同じような協定合意をしたとしても、ノルマを課せられない限り米国からの輸入は大して増えないのは明白。それでも、というのであれば様々な規制を掛けてくるという強硬手段に出るしかないだろう。もっとも米国は必ず防衛装備を大量に買え、とか在日米軍の駐留費用を倍増させろ、とか言ってくるだろうけど。恐らくそれもMAGAなのだろうけど、傍目に見ても今回の日米協議に関しては、いくらでも日本がヘソを曲げることが出来る立場にあると思うけどね。日米の場合は、結局は米国債買え防衛装備なんだろうけど。

まぁ、理不尽な関税を武器にして世界各国と貿易協定を結んでも、米国経済にはそれほどの意味をもたらさないと思うし、実際債券市場はちょっと呆れてるんじゃないかな。米国債10年金利は下げるどころか上昇してるじゃないか!株式市場はぶっ飛んでるけどね。

さてそれよりも、トランプの言う地球を揺るがす重大な発表って何だろう?という方が興味があるけれど、今回この忙しい大変な時期に、なぜトランプ大統領は中東歴訪なんかするの?ってことだよね。いま、OPECは、特にサウジは狂ったように増産するの一点張り。原油価格が下落しまくってるのに増産するからには、何か理由があるはず。OPECプラスでは減産協定なんかまともに守る加盟国なんかないらしいし。怒り狂ったサウジはならば安売り勝負をしたる!みたいなことが伝わってくるけどね。

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そこにトランプ大統領が割って入るわけで、中東諸国のデータセンター構想にNVIDIAの生成AI用GPUをバンバン売るのだろうし、そのためにバイデンの輸出規制を撤廃する準備を始めてた。中東諸国が石油で巨万の富を得られる時代は終わっていて、蓄積した莫大な富を何とか生かして産業を興したいと思ってる。

また、トランプ大統領は前政権時にアブラハム合意を取り付けたけれど、これはアラブ首長国連邦(UAE)とイスラエルの平和条約だった。トランプはこれでノーベル賞を取りたかったらしいけど、今回は恐らくサウジとイスラエルでやるのかも。イスラエルにはガザは米国が統治するみたいな条件を付けるのかね。いずれにしてもその辺の発表なのかもしれないと思ってるけどね。

 

日米株はぶっ飛んでるなぁ・・・。これで、次々に各国と貿易協定合意なんて発表するたびに、株価は上昇し続ける?けどね、そうなればなるほど米国長期金利は上昇しちゃうんじゃないの?
パウエル議長は昨日の会見で連邦債務に関しては、関わりたくなかった様子。記者の質問にまともに答えなかった。「持続可能とは思えないが・・・」と言葉を濁して、でもそれは連邦政府の問題だから、と言及を避けた。

今頃ベッセント財務長官はスイスに向かってるかな?米中協議のためだけど・・・。トランプ大統領は「米中協議は中身のあるものに」と言って関税引き下げを示唆してるけど、おいおい、習近平とプーチンはモスクワでの会談で「米国主導の世界秩序に断固対抗」と言ってる!

ベッセントじゃ無理でしょ!米国債長期金利ぶっ飛んでるぞ!