トランプ政権の関税政策は必ず失敗する!その結果米国は・・・
- 2025.05.10
- 時事問題

はっきりと米英貿易協定の合意は茶番劇だと言える。なぜならそもそも米国はイギリスに対して貿易黒字国なのだから。だから関税交渉などする必要は全くないはずなんだけど、航空機を買う、エタノールや牛肉を買う、という条件でイギリスの鉄鋼・アルミ関税をゼロにしたり自動車を年10万台までは10%の関税でいいよ、というのが合意内容で、米英貿易の本質は何も変わっていないからだ。
変わった点と言えば、イギリスは農産物輸入のほぼほぼ全額をEU圏に依存していたし、航空機もエアバスから買う部分もあったけど、それを米国が横取りしただけ。これってつまりは、EUに対して喧嘩を売っているのと同じなんだよね。
米国はイギリスの次に各国と貿易協定に合意するのだろうけど、影響力のあるEUや日本とは交渉が難航しているし、最大の貿易相手国である中国に対しては、現時点で145%の関税を掛けている者の、今週末にスイスで始まる交渉に先立ってトランプ大統領は80%にオマケしますと言い出した。そうしたらトランプ政権の閣僚の間で、「大統領、それは遣り過ぎです」という意見が出る始末。
この背景に何があるのか?と言えば米国内小売店から中国製品が急激になくなっていて、あと1ヵ月もすれば全米中の小売店から中国製の日用品が完全に姿を消すことが分かっているから。世界中との貿易協議合意を取り付けていない段階で、中国と交渉をするのは足元を見られるだけ。
米国としても、中国製が入らないのなら他国から・・・という選択肢もない状況に間もなく陥ろうとしてる。それほど米国民の中国依存度は高いわけだよね。
そもそもトランプ政権は米国を「輸出大国」にしたいらしい。中国を含む世界中に厳しい関税規制を課して、それを武器に強制的に米国に有利な条件を引き出そうとしてる。思えばパンデミックの時、世界中が強烈なインフレに見舞われたのはサプライチェーンが分断してしまったのが主要因だったわけだが、トランプ政権は同じことを関税という武器をを使って誘発しようとしてる。
何方も物理的にサプライチェーンを分断することに変わりはなく、ワクチンに相当するのが貿易協定合意ということになる。けれどもどちらも即効性はなく、その影響は1年、2年と続いてしまう。米国民はその間に高関税の輸入品を使い続けるしかなく、米国民の需要を賄えるには到底足りない品不足の状態のなかで、物価は上がり続けることになる。
しかもトランプ政権は、大規模な減税法案を今月末には下院を通過させる意向。このような経済状況のなかで減税となれば、それは即物価を押し上げる要因になるのは火を見るよりも明らか。
こうした政策をトランプ政権下で推し進めているのが、ピーター・ナヴァロという上級顧問とスコット・ベッセント財務長官だ。この二人は「米国の輸出量を増やし、ドル安誘導すれば、連邦政府は関税収入で、また民間企業は増産とドル安で、それぞれ大きな利益を獲得できる」という理屈。世界全体のマスは決まっている中でそれを実現するには、中国や日本を叩くしかないという論理で、特に徹底的な中国潰しをやってシェアを奪う作戦だろう。
政権はまず隣国のカナダとメキシコに高関税の口火を切った。それだけでも米国の自動車産業を中心とする製造業は途方もない窮地に追い込まれたわけだが、今度は中国を叩くことで、米国内に出回るおびただしい商品の息の音を止める選択をした。
ピーター・ナヴァロと言う人は一応経済学者らしいのだが、完全に常軌を逸してるし、ベッセントもヘッジファンド・マネージャとして机上の計算は出来るだろうけど、実体経済を考える能力などありはしない。これを経済知識の乏しいトランプ大統領は受け入れてしまった・・・。
これが、米国経済の一番の悲劇になる可能性は非常に高いと思う。
相互関税政策は当事国の経済にとってはマイナス以外の何物でもないし、その上特別な条件を課せられたら、相手国にとっては国益を損ねることに繋がる。けれども米国内の需要が減少するわけではないので、このコストはジワジワと米国民が負担することになる。
ドル基軸通貨と言うが、米国外の主要国では自国通貨の信認を高めるという意味でゴールドの保有を急激に伸ばしている。だからこそゴールドの相場は天井知らずの上昇を見せているわけだ。その結果として、基軸通貨の地位を脅かすのはユーロなのかもしれないし、人民元なのかもしれないが、いずれにしても将来的にドル売りは徐々に増加し続けることになる。
ならば、米国の連邦債務の増加は止まるのか?と言うと決して止まるようなことはない。
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