北のミサイル発射は米朝の出来レース、入手ルートは韓国か

北のミサイル発射は米朝の出来レース、入手ルートは韓国か

5月以降に北朝鮮が発射した、9回18発の弾道ミサイルのうち、10発が新型弾道ミサイルという分析を防衛省が公開しました。

1種はロシア製のイスカンデルに酷似したミサイルで、もう1種はなんと米国製ATACMS(エイタクムス)に酷似していると専門家は分析しています。

迎撃不可能な2種

北朝鮮が弾道ミサイルの発射シーンの画像を公開した時、一部のメディアはそのミサイルがロシア製のイスカンデルに酷似していると報道しましたが、それは単純に意匠が似ているという話ではなく、実際に防衛関係者から出た弾頭の飛行状況から判断されたものでした。

従来の弾道ミサイルは、発射から加速して頂点に達する手前で、弾頭部分を切り離し、自然な物理法則に従って放物線を描き着弾するわけです。

ところが北朝鮮が発射した「新型」と称するミサイルは、弾頭部を切り離した後、滑空して落下軌道を変え、さらに急上昇後垂直落下して目標を捉えるというものでこれがイスカンデルと同じだったわけです。

また米国製のATACMSに酷似したミサイルも同じような弾頭制御が行うことができるもので、実際に放物線飛行を行わなかったために着弾地点が韓国側の発表と防衛省の発表で大きな食い違いが生まれました。

韓国側の発表は、発射地点、高度とも性格で防衛省と一致していましたが、韓国軍は弾頭の放物線を予想して発表したために着弾地点を把握出来なかったわけです。

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迎撃できないミサイルの登場

イスカンデルやATACMSと言った弾頭の飛行制御が可能な新型ミサイルは、従来の迎撃ミサイルシステム、SME、PACK3、THAAD、そして日本が配備を計画している陸上設置型のイージス・アショアでは、放物線を計算して目標を捉える形式のため、迎撃することが不可能です。

つまり、日本がこれから莫大な予算を投じて秋田県と山口県に配備しようとしている地上配備型弾道ミサイル迎撃システム(イージス・アショア)では、北朝鮮がイスカンデルやATACMSを発射した場合迎撃することができません。また、米国が韓国に配備したTHAADは高高度対応(高度40キロ以上)に対応するだけで、弾頭制御型には対応できないわけです。

ましてSMEやPACK3などの中高度型、およびパトリオットなどの低高度型での迎撃は無力です。

北のミサイルの飛距離はすべて目標を正確に捉えていた

ATACMS型ミサイル 労働新聞より

今回の9回18発に及ぶ北朝鮮の弾頭ミサイル発射は、その飛行距離と着弾点の角度を変えると、すべて(韓国や在韓米軍基地、中国都市)を正確に捉えていることが分かりました。

つまり北朝鮮は単にミサイルの発射実験を強行しただけでなく、実戦のシュミレーションに基づく発射を繰り返していたことになります。

まして、労働新聞に掲載された金正恩委員長立ち会いの発射では初めて夜間で行われていて、衛星監視やドローンによる監視では捉えられない時間帯で十分に発射地点を察知されずに攻撃可能なことを示しています。

こうした弾道制御型のミサイルは打ち上げから頂点に達するまでの所謂ブースト(燃料による加速)時が唯一の迎撃チャンスなのですが、発射地点の把握が夜間で遅れると迎撃は困難になるからです。

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GSOMIAを破棄した自殺行為

日本と韓国の着弾位置の発表の差異によって、韓国が新型ミサイルの弾頭制御には対応できていないことが露呈してしまいました。

日本の自衛隊は、監視衛星と様々なレーダー追尾システムによって、北朝鮮の弾頭制御を十分に把握できたわけですが、今後も韓国はそれができなわけで、そうした状況にもかかわらずGSOMIAの一方的な破棄を決定していて、これは冷静にみれば自殺行為に等しいものです。

通常の放物線を描く弾道ミサイルであれば、発射から高度まで監視出来れば着弾地点は分かります。しかし、新型ではそれができず、THAADでも迎撃できないと言うことになります。

2種類のミサイルを保有しているのは世界で韓国軍だけ

韓国は玄武2a、玄武2bという中距離弾道ミサイルを開発し、玄武1と玄武3(巡航ミサイル)と合わせて現段階では1700基を保有しているとみられています。

 

韓国・玄武2bとロシア・イスカンデル

そのうち、玄武2aは米国から購入したATACMSを解析・流用したものであり、玄武2bはロシアのイスカンデルであると言われていて、弾頭制御型の中距離弾道ミサイルを2種類保有しているのは、世界でも韓国軍だけです。

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韓国・玄武2aと米国・ATACMS(エイタクムス)

現段階で新たにゼロから中距離弾道ミサイルを開発するのは比較的容易ですが、弾道ミサイルの欠点として発射後ブースト(燃料噴射)で一定時間加速後は放物線を描く慣性飛行となるために、命中精度が高くないということです。従って、ピンポイントで目標を捉えると言うよりも、核弾頭を搭載して広範囲にダメージを与える方法が一般的です。

ましてイスカンデルやATACMSは、弾頭の飛行制御をプログラミングして姿勢制御をおこなう形式で、その実用化は相当の難易度が要求されます。

しかし、北朝鮮の発射した新型と称する弾頭制御型ミサイルは、極めて高精度に目標を捉える能力があることを証明しています。

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北朝鮮に独自開発の技術はない

弾道ミサイルが厄介なのは、通常制御システムや衛星監視システム等を必要としない点で、発射実験をある程度積み重ねてしまうと比較的容易に開発可能という点です。

従って北朝鮮の弾道ミサイル開発は、エンジンやミサイルの構造開発に重点が置かれ、核開発と合わせて所謂大型化(長距離弾道ミサイル)の歴史でした。

しかし今回の中距離弾道ミサイルの連続的な発射実験は、弾頭制御型のノウハウを得ることが最大の目的と思われますが、極めて高精度なセンサー技術が要求されるために、独自開発は物理的に不可能と言われています。

つまり、北朝鮮が発射した新型ミサイルは、北朝鮮が独自開発したものではなく、外部から供与を受けたと考えざるを得ないのです。

現在の韓国の姿勢からして、北朝鮮の新型ミサイルが2種類同時に発射実験されたと言うことも含めて考えると、入手先は韓国と考えるのが、自然に思われます。

黙認するトランプ大統領

ロシアならば北朝鮮にミサイルを売却する可能性は否定できませんが、少なくとも米国製のATACMSが北朝鮮に渡るといのは考えられないことです。北朝鮮は国連安保理決議によって厳しい制裁下にあり、米国が供与することはあり得ません。

しかし、昨今の韓国文在寅大統領の姿勢や、国連制裁決議違反を犯して様々な物資を北朝鮮に供給していた事実を考慮すれば、韓国がミサイルを供与する可能性は十分にあります。

そして仮に韓国がミサイルを供与すれば、その事実を米国に隠し続けることなど不可能です。従って、そうした事実があったとすればトランプ大統領は当然のことながら報告は受けているはずです。

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またG20後、極めて例外的な手段と方法で米国と北朝鮮の板門店会談が実現し、その23日後には北朝鮮は中距離弾道ミサイルを発射し、さらに新型ミサイルの発射を繰り返しました。

北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに、「米国に届かないミサイルなら問題ない」という容認するような発言を繰り返し、また米韓軍事演習の最中に北朝鮮はトランプ大統領宛てに書簡を送り、ミサイル発射に関して説明しています。

つまり、こうした極めて不自然な米朝の態度から推測するに、今回の5月以降の一連の9回、計18発の中距離弾道ミサイルの発射に関し、事前にトランプ大統領の承諾を得ていたということになるのではないでしょうか?

 

北の弾道ミサイル発射は米朝の出来レース

中国人民解放軍は、大量のミサイル開発を行い、日本も含めた東アジア全域に対し中距離弾道ミサイルの配備を終えています。それに対し、米国は韓国国内にTHAADを配備するとともに、韓国に積極的にミサイル供与を行い対抗しています。

また、米韓、および日米が同盟関係にあることで、GSOMIAを結ぶとともに韓国の弾道ミサイル開発もある程度支援をしてきました。

しかし、文在寅大統領になり、北朝鮮との南北統一を志向するようになって、日米に対する排除機運が高まってきたことで、米朝間で何らかの合意があったのではないか?と思われます。

つまりそうした合意の一環として、トランプ大統領は北朝鮮の中距離弾道ミサイル実験を黙認している、と考えるべきです。少なくとも北朝鮮の新型ミサイルは、韓国を標的にする意味は余りなく、現実的には中国に対しプレッシャーを掛ける効果が高いのです。

中国と北朝鮮は同盟関係にありますが、必ずしも関係は良好とは言えません。また過去の歴史からして中国の介入を許せば、北朝鮮自体主権を失いかねないわけで、金正恩はそのことを恐れているわけです。

米国も対中制裁を強めていく上で、韓国以上に北朝鮮のほうが扱いやすいとトランプ大統領は考えている・・・北朝鮮の弾道ミサイル発射は米朝の出来レースです。

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