現在の株式投資事情:米国市場の影響が強過ぎる日本市場
- 2019.10.12
- トレード雑感
今の日本市場の動きは、海外勢が決算に向けてトレーディングの利益を確保するために、ボラを演出している相場。そうした動きは今年に限ったことではなく、毎年年末高を演出するのは海外勢の決算対応だということを、まず前提に相場を見る必要がある。
そして実は今年の株式相場は、日米ともに投資銀行の短期運用やファンド等の短期運用など大口投資家にとっては、笑いが止まらないほどイージーに儲かる相場なのだ。それは言うまでもなく、第45代合衆国大統領ドナルド・トランプという存在があればこそ、なのだが・・・。
トランプ大統領のツイート
そもそもトランプ大統領がツイッターを使うようになった理由は、大統領選挙における米国メディアのフェイク報道が原因です。米国メディアは(日本も同様ですが)総じて左派系色が強く、民主党との相性が非常に良好で、それをヒラリー・クリントンは十分に活用した。ヒラリー(民主党)陣営はメディアを抱き込みながら、トランプの女性スキャンダルの発掘と報道に血道をあげていた。
現在も、中道やや政権寄りと言われるのはFOXニュースのみで、その他のメディアはTVも新聞もほとんどすべて反トランプだ。
そうした状況にトランプ大統領は非常に苛立っていて、どうせ自分の発言が勝手に解釈されてフェイク的に報道されるなら、直接米国民に届く方法を選ぶ、ということでツイッターを使うようになった。
そんな中で、株式市場は大統領のツイートに最初は戸惑い気味でしたが、時間がたつにつれ、それを「材料」として認識するようになった。たとえ大統領の直接ツイートであっても、それが的確に経済状況や政策を反映したものであるとは限らないが、生の情報として将来株価を反映する絶好の材料と捉えるようになった。
そうなるとトランプ大統領自身も、ツイートすることで株価を誘導できるという事実に気づいて、今度は積極的に相場をコントロールするようなツイートを発信するようになっている。
米中貿易戦争が始まったこの一年間は特に、対中政策にリンクしたツイートが多くなって、株価を形成する主要材料といった極めて歪な金融市場が誕生してしまったと言える。
ファンダメンタルズで動かない相場
本来株式市場では、将来の経済指標の変化やそれを反映した企業業績への期待といったファンダメンタルズのウエイトが高かったはずだが、米中貿易での対立といった「大きく経済変動を伴う要因」が出現したことで、株価予想の難易度が高くなってしまった。
これは、プロのアナリストにとっても、大口の資金にとっても重大な問題で、(ロングでの)運用側はほとんどまな板の上の鯉のような状況に陥ってしまった。そうした状況では、コロコロと変わるトランプ大統領のツイートで激しい値動きになると、ポジション調整を強いられる場合も出てくる。
そうなると株価の運用予測を修正する新たなシナリオが浮上してくるわけで、結局ファンダメンタルズでの投資判断が変化してしまう場面が急増してしまう。これこそが株式市場の歪みである。
割安だから株価は期待できる、とか好業績なので上昇期待が大きいと言った判断が、トランプ大統領のツイートでセンチメントが大きく変化し、ファンダメンタルズで動かない場面が頻発している。
その結果、相対的に見て米国株価は、2018年から史上最高値圏ではあるものの、広いレンジでの揉み合い相場に陥っている。
センチメントを演出するトランプ大統領
一方ヘッジファンドや短期運用筋のなかには、従来通り先物やCFDを絡めた作戦をとってきて、それらがトランプ・ツイートによって度々大きなポジション調整を強いられている。それが昨年暮れから今年にかけての大きなボラティリティとなって表れているわけだ。
ショートを得意とするヘッジファンドは、下落局面を演出し先物の売り玉を積み上げるが、それが度々トランプ・ツイートによって逆襲される・・・。
そのために、2018年、2019年の米国市場は$27,000-$23,500のレンジ相場を形成し、特に2019年は2018年10月からの大きな下落相場の反動で戻り相場を演じているが、この相場の材料は米中貿易戦争1本と言うことになった。
他の懸念材料も多く、また米国経済も含めた世界経済が減速する中で、「米中さえ合意すれば問題なし」とするスタンスは一向に変化していない。
そして中国経済が減速すればするほどに、米中合意への期待は高まっていると言うわけで、そうした株式市場のセンチメントを巧みに形成しているのが、トランプ・ツイートということになる。
しかしそうした権力者の口先介入が当然のようになってしまって、そのたびに変化する投資家のセンチメントに株式市場が支配されると言う、株式市場は決して好ましいものではない。
米国に追従するだけの日本市場
そうした米国市場の状況で、日本市場は考え得る最悪の市場と言えるのではないか?それはもちろん、日本市場のプレーヤーが外資中心でザラバ取引の7割を占め、さらには先物取引も一時は9割近くを支配していたことが要因なのだが・・・。
外資が日本市場でイージーかつ大きな利益を出すためには、タイムラグを利用した米国追従型の市場としてしまうこと。米国市場が引けた後に、その流れを引き継いで日本市場が動くというパターンを作り出すことで、リスクをヘッジしながら利益が獲れるというシナリオだ。
従って、日本市場を日本の視点で見て、評価することがナンセンスとなる。
仮に日本市場が、米国市場と反対の動きをする場合は、日本時間で新たな材料が浮上した場合であることが多い。しかし、その晩の米国市場が堅調に推移すれば、たちまちCFDによって日経平均は戻ってしまう。
かくして、日本市場で株式投資をするということは、多くの場合米国市場への投資と考える必要がある。
また海外投資家にとって日本市場が米国市場のヘッジ市場であるがゆえに、また東証がそこそこの取引ボリュームを持っているがゆえに、「流動性の高いヘッジ市場」と位置づけている。
そうした事情が、米国市場と日本市場の連動性を生んでいるのだ。
今の株式投資は米国市場を見ないと勝てない
現在の米国市場は、カネ余りの金融相場であり、またトランプ大統領の口先介入が常態化してしまったことでセンチメント相場となってしまった。また、米国ではアリババのような決算の最終集計のみを公開(発表)する企業が堂々と上場し、そして多額の資金を集めるような、マネーゲーム市場の側面も持ち合わせている、「大きく歪んだ市場」なのだ。
そうした米国市場に連動するような外資の投資行動によって、日本市場はここ数年間は極めて米国市場に連動しやすい市場となってしまった。
現在の日本市場では、以前よりもはるかに個別株の動きが小さくなっている。特に小型株市場ではそうした傾向は如実で、10倍、20倍と言った大相場を演出するには、余りにもセンチメントの影響を受け過ぎる。従って、米国株の動きとは関係ない小型株でも、個人の逃げ足が速いために崩れてしまう。
だからこそ、現在の株式投資は、米国市場の動向を無視しては勝つことができないと言っても過言ではない。少なくとも勝つためには、各投資家が今以上に米国株の動向を気にする必要があると考える。
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