米中合意に対する楽観剥落:日本株を読め!【10.15~10.18】
- 2019.10.14
- トレード予想
10月11日(金)日経平均引値 ¥21,798(前週予想¥22,000)
現在の日米相場地合
米中部分合意
11日、中国の劉鶴副首相と米国トランプ大統領は、米中貿易戦争で「部分合意」として、中国は米国の農産品の大量購入を条件とし、それに対して米国は15日からの関税引き上げを中止すると発表した。しかし、この合意は単なる口頭での合意に過ぎず、現時点では文書化されてはいない。
従って、具体的な合意内容については、正式に発表されたものはない。にもかかわらず、この部分合意を好感した米国市場は週末に$319と大幅上昇し、なおも月曜のCFDはさらに上げ幅を積み増している(1時30分現在)。
そうした米国市場の動きに対し、日経平均CFDも週末金曜に¥246高した日経平均をさらに¥280上乗せる動き(1時30分現在)となっていて、15日のGUスタートは、現時点では確実な情勢となっている。
失策続きのトランプ大統領
しかし、こうした株式市場の動きは、個人的には全く理解できないものだ。そもそも、農産物を購入したら経済が回復するというシナリオはどこにも存在しないし、むしろこの部分合意の内容だとすれば、米中関税は現状維持されるわけで、そうなれば、少なくとも中国経済の悪化は止まらないし、米国の企業業績もプラスする要素ではない。
それよりもむしろ、他の構造的な改革要求を一つも通せていない状況での部分合意は、トランプ大統領の選挙対策以外の意味はなしで、安易な合意をする姿勢は返って中国の強気を招くばかりだ。
そのことは、北朝鮮の不誠実な態度、イランやトルコの態度を見れば明らかで、状況は悪化するばかりだろう。
トランプ大統領は、中国や北朝鮮、イランのボルトン解任要求を跳ね返すことができず、「すべてをぶち壊した」といってボルトンを解任してしまったが、イランのタンカー攻撃、サウジ攻撃、に対し報復できなかったことで、完全に強大な軍事力を背景にした外交のアドバンテージを失った。
その上、中国と部分合意とぶち上げたら、世界は混乱するばかりだろう。
台風19号被害
安倍政権は消費税増税を敢行し消費の現場を大混乱させた挙句に、トランプ大統領が日和ったことで北朝鮮や中国の脅威に直接晒されるという事態を招いた。
日米共同で北朝鮮を制裁し、拉致問題を解決するとした公約はすっかり忘れ、日本を直接的な脅威に晒すことで、改憲論議を盛り上げようとしている。
そうした方針に天罰が下るごとく、日本は台風19の猛威に晒され、甚大な被害を出しつつある。
日本経済は、こうした安倍首相の浅はかなスタンドプレーによって、さらに失速することは確定的となった。
高まるリスク
トランプ大統領は、米国下院がウクライナ・ゲートによる弾劾調査を開始して以来、不思議なほどに弱気になっている。既に「米国は軍事力の行使ができない」という事実を、イラン問題で晒している上に、トルコのクルド人勢力への攻撃に対しても傍観し、遂にはクルドとシリア(アサド政権)との協力を引き出してしまった。
これに対し米国はサウジに対し3000人の兵力増派を発表し、中東撤退方針を180度覆して見せた。これによって中東の危機的状況に一段と拍車がかかってしまった。
イランに対し米国は軍事力の行使の代わりに、オバマ時代に解除した経済制裁を一層強化して課している。これによって、イラン経済は壊滅的な状況にいたっているが、これを打開するには原油価格の大幅な上昇以外にない。つまり、イランはサウジの原油生産に対し、再度大規模な攻撃を仕掛ける可能性が一段と高まった。
いま、イランがそうした行動に出れば、世界経済、とりわけ日本経済は壊滅的な被害を受ける。
外交音痴のトランプ大統領に完全に連携・協調している安倍政権は、消費税増税とあいまって取り返しのつかない事態を招いてしまう可能性は極めて高い。
危険な楽観
世界経済がジワジワと後退するなか、株式市場は日米ともに極めて堅調に推移し、しかも今回の米中部分合意を材料にして上値を追うという超楽観状態に突入している。
しかし、この楽観相場は、極めて危険な状況だと思う。
個人的には買いスタンスはもはや取れる状況ではないと判断し、多少負けても売りスタンスで向かうつもり。こうした株式市場の動きは投資家が目先の株価の動きに惑わされ、総楽観モードに突入した証拠・・・と考える。
米国ダウ日足チャート・テクニカル
タイミング良く反発ムードに乗ってもたらされた米中合意観測で三角持ち合いの下限から切り返した米国ダウは、持ち合い上限の$22,150に届くかどうかは微妙な感じがする。
既に米中部分合意に関しては様々な記事が出てきており、ネガティブなものも増えつつある。冷静に捉えると、株価が上昇するような内容ではなく、常識的には期待の腰折れから「材料出尽くし」になって当然の内容だった。
なので、早ければ今夜の(14日)の相場で、利食いと成る可能性も少なくないと思われる。
そして最終的には、今の相場は景気後退という現実に鞘寄せする相場であることは、確信を持って言える。
日経平均日足チャート・テクニカル
日経平均は、現時点ではCFDが¥22,000を上回っているが、今夜(の米国)次第では明日、寄り付き天井の利食いと成る可能性がある。
そもそも、今回の上昇劇は、米中合意期待もさることながら、日本市場の需給修正の意味合いが強かった。現時点でも完全に修正されてはいないが、少なくとも余りに売り過ぎたリバウンドと海外短期筋の買いが重なっての戻りと見る。
しかし、消費税増税に伴う消費減、実態から見る中国経済の影響、中間決算観測、そして台風19号被害と日本経済は買われる要因は需給以外には存在しない。
ドル円も恐らく¥108.60が戻りいっぱいの水準となる可能性が高く今夜には反転するだろう。
10月18日(金)日経平均予想
いずれにしても、株式市場の楽観ぶりはここ数カ月、終始指摘してきたことであり、今回の米中部分合意に対する反応は、楽観のピークだと判断。こうした流れはいずれ大きな修正をもたらすと思うが・・・。
少なくとも今週、楽観から上値を追い掛けるようなら年内、非常に嫌な事態が待っている気がする。なので、今週は冷静に部分合意を見極めた動きを期待する。従って
日経平均株価 ¥21,400 ドル円¥108.00
を予想する。
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