揉み合いから地合いの変化も:日本株を読め!【10.28~11.1】

揉み合いから地合いの変化も:日本株を読め!【10.28~11.1】

10月25日(金)日経平均引値 ¥22,799(前週予想¥21,800)CFD ¥22,825

日米市場の現状

この6月、7月の2ヶ月間の相場あたりから日米株式市場の連動性が薄れる兆候はあったと思う。つまり、米国市場はG20大阪以降米中対立の緊張が一気に和らぐと評価して、なんと史上最高値を更新するような戻りを演じたわけだが、その時の日本市場は結局ドル円(円高)の影響で戻るに戻れなかったわけだ。

そして、8月相場で揉み合った後、日米ともに戻りを試したわけだが、ここではFRBが明確に利下げと量的緩和に転じたにも関わらず、米国金利の低下が日米金利差を圧縮してしまって、円安方向で推移したのが幸いした。

10月1日から消費税増税となったことも、海外勢はほとんど無視する形で、6月、7月の日米差を埋めるがごとくの(日本株の)水準訂正となり現在に至っている。

もちろん、日本株の水準訂正、つまり「日本株は評価不足」との判断であるから、日米の連動性が薄れて当然なのだが、そういう予想は事前にできなければ、まったく意味はない。

Advertisement

ペンス演説が予想外に穏健だった?

10月24日ワシントンのウィルソン・センター(シンクタンク)で対中政策に関する2度目の演説を行った。前回(2018年10月)の演説が終始強烈な中国批判一色であったから、今回は前回ほどのインパクトはなかったが、内容は昨年とまったく変わりはなかった。

私のハドソン研究所でのスピーチから1年が経過した今、中国は米中の経済関係改善のための意味のある行動をまだ取っていない。その他の多くの問題では、中国の行動はさらに攻撃的でかく乱的になった。貿易面で5月には、数カ月に及ぶ交渉の後にできあがった150ページの合意書を最後になって拒絶した。(日本経済新聞より引用)

知的財産侵害を止めると2015年に約束したにもかかわらず、中国政府は米国の知的財産の侵害を支援し続けている。麻薬入り医療用鎮痛剤「フェンタニル」を巡っても約束を守らず、何千人もの米国民が毎月命を落としている。中国はかつてない監視国家を構築している。その技術をアフリカ、南米や中東に輸出している。(日本経済新聞より引用)

数百万人に上る少数民族と宗教的少数派の人々が、彼らの宗教的、文化的なアイデンティティーを根絶しようとする中国共産党の行いに苦しんでいる。(日本経済新聞より引用)

その他、台湾や香港問題を指摘し、さらに中国の検閲に迎合した(米企業である)ナイキやNBAを鋭く批判した。こうした内容からして、この1年間の米中貿易交渉における進展に、まったく満足していないことがうかがわれる。しかし、それでも今回の演説が「穏健」と感じるのは、絶海ほどに辛辣な言い回しをしなかったからで、そこには確実に配慮が感じられる。

前回は副大統領としてトランプ大統領や議会の政策をプッシュしたものだったが、今回はある意味では「米国のリーダーを意識したもの」になったと理解している。

Advertisement

防戦一方のトランプ大統領

一方、トランプ大統領はウクライナゲートで連日苦戦の日々。同氏のツイートは、この問題に対する批判ばかりで、すっかり政策的なものは影を潜めた。

そうした変化に対し言及するメディアは、日本ではほとんどない。しかし反対に米国のメディアは連日トランプ批判を繰り返していて、なかなか正確な現状認識ができないという事情はあるものの、今回のトランプ大統領の弾劾調査は、過去のものと比較しても「外国政府に対し自国の大統領選挙に影響する調査を要求した」という点において比較にならないほど重大だと思われる。

そして調査の過程で次々に重大な証言が飛び出している現状では、この流れをせき止めるのは至難の業であって、下院での弾劾決議はよほどのことがない限り確実なのではないか。

トランプ相場は終了か?

トランプ相場は2016年の大統領選挙から始まり、米国ダウろ$17,000から$24,000に引き上げた。しかし、もう少し長く見てみると、2015年7月のオバマ政権下で$20,000台があるし、現在は$22,800だ。もちろん、リーマンショック後からの上昇相場は途切れたかどうかは分からないが、同時に今後再度上昇相場に回帰できるかどうかも未知数だ。

トランプ大統領は、その強烈な個性でグローバリズムを否定する戦略に出たわけで、それを米国民が支持したから株価が上昇したということではなくて、史上最大の減税を実行したから。つまり、トランプ大統領の強硬は発言は株式市場のボラティリティを作り出しても、トレンドを作ることはできないことを証明しているに過ぎない。

Advertisement

株価のトレンドを決めるのは、減税や金利といった消費に直接影響の出る政策や輸出企業の業績を左右する為替レートであると、改めて感じさせるに至っている。

ということは、言いかえれば、米国市場は今後米国経済を大きく変化させる可能性のあるインフラ投資法案以外にないのではないか?と思われる。

もしも、トランプ大統領がウクライナゲートで失脚するような事態になれば、それは株式市場の大きな懸念であって株価は上昇トレンドに回帰できないと考える方が自然だと思うし、日本市場が単に割安であるというだけで、米国市場と乖離した動きを今後も続けると考えることは、理屈に合わない。

米国市場のこの1年半余りの持ち合いは、米中関係を筆頭に繰り出されるトランプツイートに一喜一憂するような相場であって、そろそろ株式市場のプレーヤーは限界を感じているに違いない。

米国ダウ日足チャート・テクニカル

先週に引き続き米国ダウは、中期的な三角持ち合いの中で推移する格好になっていて、当面はこれをブレイクするような動きは想像し辛いと思われる。また、米国ダウを長い目で見ると、リーマンショック以降の長期的な上昇相場に対し、この2年間の持ち合いは、明らかに米国経済の行き詰まりを模索していると見える。

冷静になって考えれば、米中対立は経済的には大きな影響が出るはずで、それを事前に織り込もうとする動きをトランプ大統領は過激なツイートで覆す。そうした極めて作為的なマーケット・メイクを行って株価水準を維持しているのがトランプそうばと言える。

Advertisement

だが、もしもトランプ大統領の辞任が問題になるような地合いになれば、相当な利食い玉が出てくることは明白で、その意味で米国では、米中問題よりもはるかにウクライナゲートに対する関心が高いのだろう。

下院の弾劾調査は少なくとも年内いっぱい時間がかかる。そして2020年は大統領選挙イヤーであることを考えると、この問題は年内の急転直下の可能性も否定できないと思う。

個人的には、今週になっても米国ダウは持ち合い上放れするのは難しい状況と考えざるを得ない。

日経平均日足チャート・テクニカル

そもそも日本市場は、トランプ相場となって以来米国ダウ同様に、持ち合い相場入りしている。昨年10月に日経平均¥24,448の高値をとりつつも、トランプ相場では出来高が半減してしまった。これはつまり、米国市場以上にトランプ相場を意識して(信頼して)売り物が出ない相場になっていることを意味している。

日本経済の状況や、将来性を考慮するならば、こうした相場展開は天井付近の動きと見るべきで、相場の変調は近いと考える。

米中貿易戦争の影響は対中輸出の多い日本企業が最も受けやすく、さらにはASEANのウエートが高まりつつあることを考えると、今後の業績は厳しいものにならざるを得なくなる。

Advertisement

連日、想像以上の強さを発揮している日経平均は、需給要因によるところが大で、ある程度水準訂正が行われた現在、米国ダウとの連動性が復活すると考えている。

従って来週以降、このまま上値追いと考えるのは危険だ。

新たな相場展開の予兆

FRBが利下げを決断したのは、トランプ大統領の圧力でも、米中貿易戦争でもなく、米国内の経済状況を考えた上での決断なのではないか?と思っている。

つまり、米国経済は消費のウエイトが7割と高く、米国経済を支えているのは個人や家計のファイナンスであって、すでに個人や家計のファイナンスは危険な領域に達しつつある。そこで、利上げを継続すれば、個人消費に対する影響が大きすぎるという見方であり、CPI上昇が予想以下で推移していることが、危機感を煽っていると思う。

従って、この相場が新たな局面に突入すると言うことは、トランプ相場から現実の経済実態を織り込むと言うことなのだろう。既に米国の個人・家計ファイナンスは給与の伸びと比較しても明らかにヒートアップした状態なのだ。

11月1日(金)日経平均予想

来週もウクライナゲートに関して新たな展開とならなければ、一進一退の攻防であると予想できるが、企業決算相場に突入していることもあり、日本市場はネガティブサプライズがポツポツと出始めるだろう。

従って、日経平均株価に対して過度な期待ができる週ではないと思われ、

日経平均株価 ¥22,200 ドル円 ¥108.00

を予想する。

Advertisement