新型ウイルス感染拡大による世界経済・株価の行方
- 2020.01.26
- 世界情勢
新型ウイルスの感染が猛烈な勢いで拡大しはじめた。その勢いは2003年のSARSを超えるもので、発祥地とされた中国武漢市は事実上封鎖状態となったが、それでも中国全土に拡散し始めている。
これで春節で延べ30億人の移動があると言われる中国は、正直最大の危機を迎える可能性が濃厚だ。それに伴って中国経済は恐らく立ち直れないほどの打撃を受ける可能性もある。
ただでさえ、景気は既に実質マイナス成長と言われ、食料品を中心にインフレが止まらない状況になっているし、新型肺炎の拡散がパンデミックに指定されれば、国内販売だけでなく輸出入が大幅に制限されてしまうという、危機的状況が目前に迫っている。
今回の新型肺炎をきっかけにして中国発の金融危機へと発展する可能性は限りなく高まったと思う。いままで、共産党一党支配の名のもとに、資本主義化を促進しながらも、悪い部分はすべて覆い隠すという中国経済のモデルは、これによって隠しきれなくなるのではないか?
新型肺炎の悪影響
ウイルス性疾患は、乾燥・低温下の秋から春先にかけてウイルスの活動が活発化して、流行する。逆に夏場の高温・多湿下では弱まるわけだが、それで収束するということでもなく、低温地域に北上するか、南半球に移動する形で生き延びる。
そして多くの場合発症地域の拡大によって、発症の翌シーズンにピークを迎えることが多い。なので、現在のコロナウイルスによる新型肺炎の場合は、2月~4月位にピークを迎え、夏場に向かって一旦は減少する傾向になり、ワクチン製造など根本的な治療が確立できない場合、10月以降再度激増する可能性が高い。
今回の場合は特に、潜伏期間が約14日と長く、発症と感染にタイムラグがあることが、対策を困難にしているだろう。現在の検疫方法では感染者の特定は全くできない。春節で中国国内では約30億人(延べ)の移動があると言われ、海外渡航者も数百万人と推定されている。そのうち、訪日観光客は期間中約40万人、今後1年間で900万~1000万人が見込まれている。
すでに日本国内では3名の感染者が特定されているが、今後増加することは確実だ。しかし中国当局が、中国国内封じ込めを強化しつつある現在、中国国内の感染者数、死者数の増加は、まったく予想できない。
新型肺炎は蟻の一穴
現在の世界経済は、昨年から始まった実質的なQE(金融量的緩和)によって、何とか高水準を維持している。欧州、米国、中国の中銀は、利下げによって資金供給を増加に転じているのだ。しかし、日本の場合、日銀は従来政策を維持といいつつ、国債やETFの買い入れを減額し、既に実質的な引き締めを行っている。
こうした状況の中で、経済が好調な米国の株価は史上最高値圏であり、欧州そして日本でも高値圏を維持しているわけだが、米国以外の実体経済と株価の乖離はピークとなっている。
こうした金融バブル的な経済は、「蟻の一穴」で崩れ去るものなのかもしれない。ここ10年間の世界経済は余りに順調過ぎたのだ。
危機的状況の日中韓
危機的状況と言われて久しい中国経済だが、現状は公共事業以外の国内投資は壊滅的で、特に不動産投資は破綻状態にある。また企業業績の悪化が顕著で、昨年末から国有企業のデフォルトさえ始まっている。しかし問題は、国内経済で消費を支えてきた都市部の中間層の消費が落ち始めた。
そこに今回の新型肺炎が直撃する形になって、消費行動が制限されれば、中国経済の根本が揺らぎ始めるだろう。そうした状況で、いつ大きな経済事故が起こるのか、分からない状況になってきた。当局は懸命に情報を封鎖するだろうが、社会がパニック的な状況に陥れば、コントロール不可能である。
現時点で中国人民元は、対ドルで6.9367だが、週明け以降再び7.000を超えてくるだろう。そして2019年安値の7.1568を近付か超えてくる可能性が濃厚で、経済的な状況が表面化すれば人民元の暴落も十分にあり得る。そうなると、世界の株式市場は暴落するだろう。
また対中比率の高い韓国にとって中国経済の劣化は致命的で、昨年のウォン暴落懸念が再燃する可能性がある。昨年の対ドル1200ウォン超えから1,160ウォンに低下したのは米系ヘッジファンドの買いだったと言われている。しかし、一向に改善の傾向が見られない韓国経済を見切る動きになるのではないか?
そして日本は、国内経済が縮小しつつある中で、輸出国第一位の中国経済のダメージは決して小さいものではない。特に中国展開する自動車を筆頭とした製造業は、大きな影響を受けるだろうし、イオンやJフロントなど中国進出の小売業も苦しくなる。
さらにはインバンド政策によって来日外国人数は、新型肺炎騒動で激減することも十分にあり得る。中国人の観光客は当然としても、世界的に海外渡航が抑制傾向になるのは明らかで、そうなるとインバウンド需要を見込む国内企業もまた大きな打撃を受けるはずである。
悪影響を受ける日本企業
自動車関連
7201 日産:国内、米国、欧州とほぼ全滅の日産の頼みの綱は中国市場だったが・・・。また合弁会社相手企業の本社が武漢市である。
7267 ホンダ:米国で売れず、回復基調の中国での影響がもっとも大きい。特に武漢市に現地組み立て工場3か所を保有している。
5970 ジーテクト、6462 リケン、6923 スタンレー、7266 今仙電機 7274 ショーワ、7291 日本プラスト、7294ヨロズ、7298 八千代
いずれも武漢に生産拠点を持つ自動車関連企業で、今後の動向によっては操業停止に追い込まれる可能性は否定できない。
小売り関連
8267 イオン:武漢市にショッピングモールを展開するほか中国全土に店舗展開している。現在業績は急減速中。
7453 良品計画、9983 ファストリ、4911 資生堂、
国内インバウンド銘柄全般
電鉄株や小売り株、コスメ株等数がおおいので個別銘柄は掲載しない。ただ東京五輪イヤーでもあり一概に影響が出るとは言えないが、特に注意したいのは、4661 オリエンタルランド。値嵩株でウナギ登りだが、中国人観光客の減少があるとすればトレンド転換するだろう。
その他中国関連銘柄
6301 コマツ、6305 日立建機、6503 三菱電機、6954 ファナック、6501 日立、6752 パナソニック、6758 ソニー、4902 コニカミノルタ
大まかに中国関連銘柄のうち、動向の分からない半導体、電子部品、素材関連は除いた。この中で厳しいのは6954 ファナック、6752 パナソニック、4902 コニカ・ミノルタで、中国のウエイトが余りにも高すぎる。
石油関連
5019 出光、5020 JXTG、5021コスモ
リスクオフになれば市況関連は下落方向。特に世界的にだぶついている石油関連は、ガソリン消費の減少も見込まれ、影響は大きいと思われる。
化ける?日本企業
新型肺炎によって化ける株など、分かるはずもなく、まずはマスク関連がぶっ飛び上昇して、次に本命株が出るという動きは想像できる。2003年SARDSの時には8113 ユニ・チャームが10倍株になったが・・・。
今回は個人的には消毒用アルコールの4465 ニイタカ、4574大幸薬品あたりだと感じる。消毒用アルコールは消費が非常に激しく、メーカーにとっては長期間にわたる新型肺炎騒動での需要拡大はドル箱になるはず。しかもウイルス感染防止の決め手が接触感染予防であることを考えると、業績に対する影響は小さくないはずだ。
もっとも、現時点で大化け銘柄と言えば4連続S高の3604川本産業だが・・・。
4452 花王 7956 ピジョン 8113 ユニ・チャーム ・・・サニタリー製品
4465 ニイタカ、4574大幸薬品・・・消毒用アルコール
6291 日本エアーテック・・・クリーンルーム
感染拡大中
時事通信によれば26日午前0時の時点での新型肺炎の中国国内感染者数は
死者56人に 患者1975人、疑い例も2684人
と中国当局が発表したとの報道。つまりそれから約12時間経過した現時点ではさらに増加しているだろう。
また読売によれば現時点での感染者数は10万人程度の可能性があるとした。恐らく中国当局の発表はかなり後手に回っていると考えた方がよさそうで、そうなると、明日の株式市場は懸念のピークの最中に始まる事になる。
こうした場合、売られる銘柄、買われる銘柄がきっちりと別れるのが常で、全体としては日経平均は¥500~¥1000くらいの急落となってもおかしくはない。
この局面で買うか売りかは、個人の投資スタイルだと思うけど、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」と立ち向かうか、静観するかは、個人の投資姿勢の問題である。
しかし、必須なのは目先の状況よりも、中期・長期の予想だと思う。
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