本音で書く相場雑感 その3(8月11日版)
- 2026.08.12
- 放言
8月に入って株式相場は再度上昇トレンドに回帰するのでは?という投資家の考え方が際立ってきたように感じる。その理由はもちろん、絶好調に見える1Q決算と、各社の通期予想の上方修正によるものが大きいと思う。やはりAIの進化は止まらないし、米国のハイパースケーラーのデータセンタ投資が増額されて、いよいよ第二波に突入するのでは?という思惑が、市場に蔓延しているということかもしれない。
がしかし、おそらく今が、株式投資の成否を分ける分岐点になると個人的には思っている。その決定的な根拠はと言えば、発表されているほどにデータセンタ投資は上手くいっていないという現実がある。そもそも、ハイパースケーラー達は、どこまでも強気で投資を続けると宣言しているわけだが、米国ではメガデータセンター建設の約6割が、遅延または計画の中止に追い込まれているという現実がある。
各社が決算発表を機に投資増額を発表しているけれど、そのほとんどが、建設費用のコストアップに対する追加投資の必要に迫られているもの。建設資材の値上がりはもとより、電力供給のための変圧器、配電盤、バッテリー等の重要部品の品不足、つまりは電力設備そのものの確保ができない状態に追い込まれているという。また建設の労働力不足・技術者不足は致命的で、大幅な建設遅延に追い込まれる事例が相次いでいる。
また致命的と言えるのが周辺住民の反対運動が頻発する事態が相次いでいること。電力料金は倍近くに跳ね上がり、とんでもない熱量を放出し続け、そして汚水を垂れ流すことに対する十分な対策も最初から考慮されていないプロジェクトに対し、電力料金の高騰と環境汚染という重大な問題の解決は放置されたままだ。
AIの進化・性能はデータセンターの規模に比例するという、AIの原則を示したのはOpenAIだったけれど、ハイパースケーラー各社はその原則の通り、AIの覇権を目指して途方もない金額の投資を行っている。そして過熱したデータセンター建設合戦は、あらゆるコストの上昇をもたらす一方、必ず起こる競合によって、使用料、レンタル料は下落傾向が見え始めた。中国勢の台頭もあってAIそのものの競合もこれから本格化するだろうし、AIを使い企業もまた低料金の試用期間が終了し、本格的な高コスト料金に移行して、その莫大なコストに腰が引け始めてる。
企業は必ず費用対効果を考え、より安価なAIを求めるのは必然で、そのことは将来のデータセンター収益化に大きな影を落とすことになる。アマゾンやマイクロソフト、グーグルなどは、受注が膨大過ぎて追いつかないと発表しているけれど、収益が予想の半分になっては、元も子もなくなる。要するに莫大な投資に対して投資家が満足するような収益が得られる保証はどこにもないということ。このことを債券市場はまさに織り込みつつある。
ハイパースケーラーが起債した社債はどれもA以上の格付けをされているけれど、他のプロジェクトもまたAI投資となると文句なしにA以上の格付けを獲得する。A以上と言うことは、優良投資適格債という位置づけであってリスクはほぼないと言える。ところがその社債の金利は6%、8%、12%と有り得ない金利でないと消化できなくなっている。その金利はまさに投資不適格のジャンク債扱いといってもいい水準。
可及的速やかに大きな資金を確保したいという起債側の事情もあってのことだろうけど、最近はハイパースケーラーの社債であってもそうした金利でないと消化できないという。そして各社のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の料率もじわじわと上昇し始めた。
自社のキャッシュフローが底をつくほどの資金と莫大な借り入れ資金を投じるデータセンター投資だけど、少なくとも6%~12%の金利で回るほどの目算は建てられないだろうと思うのが自然。ただでさえ無謀な資金調達だけど、そこに建設の大幅遅延が発生しているという現実。
彼らは、まずNVIDIAの高額なGPUを押さえることが先決で、それに伴う電子部品やメモリーなども同様に大量買いをした。けれどもデータセンター建設のすべての資材を先行調達することなどは到底不可能であって、ゆえに建設は遅れる。
この状況は、ハイパースケーラー以外のプロジェクトが起債した社債が大崩れする理由としては十分すぎるし、そのあおりは当然ハイパースケーラーにも及ぶはずだ。もっと言えばNVIDIAと循環取引関係にあるAI各社・ハイパースケーラー各社は、年度以降の契約という莫大な簿外債務を引き摺りだされることになる。
個人的にはこの状況は、サブプライム(住宅ローン)債券と非常に似ていると思うし、もう有り得ないと思っていた格付け問題がまた発生する可能性が大いに出てきたという、金融危機を誘発する大問題に発展する可能性も少なくないと思う。しかし事態はもっと複雑で、そこにはプライベート・クレジット問題と一体であること、金融機関・機関投資家はそのプライベートクレジットに投資しているという致命的な問題もある。
このAI投資を取り巻く状況を頭に叩き込んで、株式投資に向かわないと命取りになる。何度も書くけれど、今のAIはおそらく費用対効果をプラスにはできないほどの高コスト体質であるということは疑いの余地がない。ほぼほぼ、闇金に嵌ったサラリーマンのようなものだろう。
崩壊は時間の問題に見える。
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