なぜ北朝鮮(金正恩)は次々にミサイル発射するのか?
- 2019.08.12
- 海外情勢
このところ北朝鮮は、7月25日から8月10日までで、矢継ぎ早に5回の短距離ミサイル(一部弾道ミサイル)を発射しています。
発射の理由は8月5日から開始された米韓合同軍事演習への反発とされていますが、どうもそれだけではないようです。
板門店会談が転機
米国トランプ大統領はG20直後に急きょ訪韓し、板門店で北朝鮮の金正恩委員長と電撃会談に臨みました。この会談にはコーディネーター役と思われた韓国・文在寅大統領の出席は許されず、約1時間の米朝会談となりました。
このときトランプ大統領は38度線を越えて北朝鮮へ踏みいれた初めての米国大統領となりました。
この会談は当然、事前に秘密裏に準備されたものですが、ここでトランプ大統領は北朝鮮の核全面放棄の方針を変えたと思われます。
そして新たな米朝協議を開始することで合意していますが、このときある条件が提示されたのではないか、という見方があります。
つまり、長距離弾道ミサイルの開発を放棄すれば、制裁の段階的な解除に応じる、という合意です。正式に発表されたものではありませんが、その後の両国の対応が、そのことを物語っています。
金正恩はトランプ好き
金正恩委員長にとって、トランプ大統領は初めて真摯に向き合ってくれた大国のリーダーです。それまで北朝鮮は世界で孤立していたわけで、かろうじて核開発によってのみ存在感が示せたわけです。
しかし、金委員長が北朝鮮の行く末に新たな選択肢をもたらしてくれたトランプ大統領を悪かろうと思うはずがありません。
そもそも、金正恩はスイスに留学経験があり、資本主義を満喫していたわけで、国のトップになって足元をみると焦りの気持ちもあったと思います。
従ってトランプ大統領とのディールに応じた可能性が極めて高いと思われます。
米国は核を温存させたい
米国は明らかに北朝鮮への方針を転換しました。板門店以降、北朝鮮は様々な兵器実験を行いましたが、トランプ大統領は問題にしませんでした。そして、板門店での米朝会談で協議再開を合意したにも関わらず、7月25日から8月10日まで、矢継ぎ早に5度のミサイル発射を行っています。
それでもトランプ大統領は一連のミサイル発射を問題にせず、「米国に届かなければいい」というスタンスを保っています。
またトランプ大統領は、金正恩委員長からトランプ大統領宛ての書簡が8日に届いたと異例の発表をし、
北朝鮮が米韓演習の中止を求めて短距離弾道ミサイルを立て続けに発射していることに関し、書簡で金氏は、米韓演習が終了すれば発射をやめると述べた。発射についても「少し謝った」という。トランプ氏は「そう遠くない将来に金氏と会うのを楽しみにしている」とし、4度目の米朝首脳会談実現に意欲を示した。(産経新聞ニュースより引用)
そして開催中の米韓合同軍事演習に関し、否定的なコメントを出して見せました。
ミサイルがどこを狙っているのかが問題
米韓合同軍事演習に対して毎回のように抗議の意味でミサイル発射を繰り返している北朝鮮ですが、今回の場合、演習の始まる10日前から短期間のうちに5回のミサイル発射という異例の行動に出ています。
しかも本来は国連制裁決議違反であるウクライナ製イスカンデル型の新型短距離弾道ミサイルの発射まで行っていますが、そのことに関してもトランプ大統領は容認しています。
今回北朝鮮が発射を繰り返しているミサイルの飛行距離は400km~600kmでいずれも日本海に向かって発射をしています。しかし、この飛行距離からすると明らかにターゲットは「北京」を思わせるものです。
つまり、この一連のミサイル発射は、射程1000kmで優に届く「北京」を仮想ターゲットにした発射の仕方で、射程1300kmが必要な東京や1500km必要な沖縄米軍基地でないことは明らかで、中国(習近平)にそれを意識させるに十分な効果があるものです。
THAADと北の核で中国(人民解放軍)を封じ込めたい
米国はTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)と呼ばれる弾道弾迎撃ミサイルシステムを韓国に配備しています。またTHAADレーダーシステムは、1000kmの探知可能範囲をほこり(実際にはその倍以上と言われています)、黄海や大陸中央部に至る広範囲で中国人民解放軍を監視出来るものです。
そしてそこに北の核ミサイルが加われば、完全に中国の動きを封じることが可能になる・・・。
米国は対中封じ込め政策として、このようなシナリオを描いていても全く不思議ではないでしょう。
そう考えれば、米国の対北朝鮮への対応の変化は十分に納得できるものになります。
連日のミサイル発射は中国への圧力
金正恩は確かにトランプ大統領となにがしかの合意に達しているのは確実です。そこで板門店会談以降の両国の対応を考えると、金正恩はトランプ大統領のディールに乗ったと考えられます。
韓国にTHAADシステムが装備されてる以上、短距離弾道ミサイルのプレッシャーの意味は、少なくとも日米韓にはないということになり、結果としてもっとも脅威に感じるのは中国以外にありません。
その意味では米韓合同軍事演習は絶好の理由付けになるのです。
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