リセッションでは済まない?世界同時株安から金融危機へ

リセッションでは済まない?世界同時株安から金融危機へ

いま、世界の投資家は勘違い(夢)から醒めつつあります。リーマンショック以降10年以上にわたって、株式市場はハイリターンをもたらし続け、債券市場は安定的な運用市場だったという夢のような時は、すでに終焉を迎えています。

すでに中国経済は2017年、そして欧米経済は2018年がピークで、景気はリセッション(景気後退期)入りしていると判断できます。にも関わらず株価は、調整後に上値を目指すと多くの投資家は信じていました。

しかしようやくそれが「大いなる勘違い」であることに気づき始めています。

景気拡大は債務拡大

景気の拡大とは、旺盛な資金需要を背景に、資金調達と投資の循環が繰り返されている状態です。そして投資で得た利益が経済成長となってさらなる投資のための新たな資金需要を喚起するわけです。

ということは景気拡大は、単純に考えると債務拡大という意味でもあるわけです。

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企業成長が止まれば株が売られる

企業の成長が止まれば、まず最初に売られるのはリスク投資である株式です。四半期ごとに開示される業績に敏感に反応して株価は上限しますが、それは株式が企業の成長期待を織り込むものだからです。

従って黒字好調であっても、市場のコンセンサスに届かない場合に失望売りとなるのは、成長期待そのものが株価を形成しているからでしょう。

個別の要因でも、外務環境の変化であっても、将来の成長に対しネガティブであれば株は売られて当然なのです。

株が売られれば債券が売られる

基本的に株が売られると(企業が)起債した債券にも売りのバイアスがかかります。しかし、安定的な運用を目的とした社債等の債券は、企業の成長如何にかかわらず、企業が存続し債券の償還が可能である限り、売る必要がないわけです。

しかし、世界景気が悪化すると見込まれると、債券の償還に不安を覚え、投資家は手元のポートフォリオを調整し始めます。

しうした行動を余儀なくされるほどに株価が急激に下落すると、債券もまた売られ始めるわけです。

利下げをすれば同時に売られる

FRBは7月31日、FFレートの誘導目標を0.250bp引き下げました。FRBは「米中貿易戦争等を加味した予防的利下げ」とコメントしましたが、トランプ大統領はその前後で「1.000bpの利下げが理想」として最大限の圧力をかけていて、現時点でもFRBを批判の対象にしています。

しかし、今回の利下げは非常にリスキーな選択でした。

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通常利下げは景気後退時にそれを下支える目的で行われるものですが、今回のFRB利下げは米国経済が好調で株価が史上最高値付近のレンジで行われました。

すると利下げはつまり、将来の景気悪化をFRBが予想した証となってしまう・・・。

仮にマーケット全体がそう解釈すると、リスクヘッジしてくるのは当然の成り行きになります。将来の景気悪化にたいしてFRBのお墨付きが出た。

そうした心理が働けば、株式は当然売られますが、債券も短期から長期へとリスクヘッジ的な行動をします。また株式から長期債への乗り換えもあるでしょう。

いまの状況での利下げは、株式と短期債、CLO(企業ローン担保債券)、ジャンク債は売られる方向です。

世界同時株安から金融危機へ

世界経済の減速懸念は米国だけでなく、すでにリセッション入りを表明しているEUや、米中貿易戦争によって急激に経済が悪化している中国やその貿易相手国、そして日韓問題で揺れる韓国、経済破綻が相次ぐ南米諸国、そして原油需要が伸び悩み財政が急激に悪化している中東諸国等々、世界中がリセッションに突入しているわけです。

そうした状況であっても米国株は独歩高を続けてきました。米中貿易戦争の最中であっても、トランプ大統領の発言や行動が株価を下支え、トランプ政権は明らかに株価を意識した政策を繰り出すことで、米国株は極めて強い動きをしていました。

しかしトランプ大統領の執拗な利下げ圧力の裏には、米中対立のさらなる激化という想定が垣間見えることから、すでに米国市場はリスクオフの動きを鮮明にしています。

投資家はトランプ政権の政策によって急激に増加する米国債務に対しても不信感を持ち始めています。

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韓国ウォンの動向がベンチマーク?

このところの韓国ウォン安に歯止めがかかりません。現在ではボーダーと言われた1ドル1200ウォンの水準を超え、13日には遂に1223ウォンの達しました。直後の為替介入で一旦は1206ウォン程度まで上昇しましたが、1218ウォン近辺まで巻き戻されています。

韓国ウォン安は、日本の輸出管理強化が原因とされていますが、実は韓国経済の悪化が原因です。輸出立国である韓国の輸出が7月に23%も悪化した事がそれを証明しています。

にもかかわらず韓国では文在寅大統領の政治誘導もあって、全面的に日本の輸出規制に対し反発、一層反日色を濃くしています。

しかし韓国経済は大きな輸出先である中国経済の影響を直接的に受けた結果なのですね。

そうなってくると、韓国ウォンが暴落するようなことになると、世界の投資家は無視できなくなります。

中国金融破綻が火をつける

すでに完全に経済が破綻状態であると、中国を評するアナリストも少なくないほどに、中国経済は危機的状況に突入しています。

もやは打つ手がないほどに国内経済がメチャメチャになっているにも関わらず、共産党支配という政治制度であるがゆえにその状況は表面化していませんが、二つの大きな爆弾を抱えています。

一つは言うまでもなく香港の問題で、現時点では軍事介入直前といった危機的な状況に陥っています。

すでに一部では人民解放軍が服装を変えて介入していると言われていますが、香港の統治問題もさることながら怖いのは金融センターとしての香港発の金融事故です。それが中国企業によるドル建て社債の償還問題へ影響してくるわけです。

中国経済に関しては人民元建ての債務云々には、海外投資家は余り反応しません。しかし米国が為替操作国認定をしたことで、俄然貿易決済を含む対外債務に注目が集まっています。

そして小規模ながら米国は中国金融機関に対し制裁を始めています。

さらにもう一つの懸念は、ドイツ経済への影響です。中国国内経済の悪化は、繋がりの深いドイツ経済を直撃していて、遂に4月ー6月期のGDPはマイナス0.1%とマイナスに転落してしまいました。

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EU経済を牽引するドイツがこの時期にマイナス成長、と言うことになると10月のブレグジットの影響は、致命的になる可能性が非常に高まりました。そして世界が金融危機的な状況になれば、真っ先に破綻が懸念されるのはドイツ銀行と言うことになるからです。

米国短期債が売られたら金融危機へ

8月14日の米国株式市場は、世界経済の減速懸念から暴落しました。そして米国債の逆イールドが鮮明となって、そのことが話題の中心になっています。

まだ債券市場ではHYG(ハイイールド債)やLOC(企業ローン担保債券)の急落は発生していませんが、米国債金利の長短逆転(逆イールド)となったことで、株価暴落の次に売られる可能性が高まってきました。

経済が好調な米国で、これらの短期債が売られるというのは、金融危機のサインとして十分だと思います。

これらの金利動向には要注意です。

リセッションになると債務残高が怖くなる

企業でも国家でも、景気がリセッション(後退局面)になると、債務残高を気にするようになり、最終的にはそれが怖くなってきます。それが投資家の心理です。

長期間景気拡大が続けば、当然のように債務残高も拡大し、気がつくと膨大な債務があることを途端に意識するようになる。これが、暴落のメカニズムであると言われていますが、このまま、株価が下がれば下がるほどに、その心理は拡大してゆくわけです。

そして債券市場に異変が起これば、リセッションでは済まない金融危機へと発展してゆきます。

いま、世界の投資家は投資残高とポートフォリオの見直しと同時に、投資先の企業債務をじっくりと考えているはずです。

低成長になればなるほど、インフレ率が低下すればするほど、債務は膨らむからですね。

9月に大きな(金融)事故が起これば、一気にリーマンショックのような状況に陥るかもしれません。

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