今の世界情勢で株を中長期目線で「買う」勇気はない

今の世界情勢で株を中長期目線で「買う」勇気はない

日米の株式市場はトランプ大統領の発言に翻弄されつつ、右往左往しているように見えるけど、本当はトランプ発言を利用した「短期筋の鞘取り相場」だと思う。もちろん、今の株式相場の変動テーマは「米中貿易戦争」だ。

株価が下がるとトランプ大統領や政権の要人達が一斉にポジティブな発言をして株価を上昇させ、上昇する頃には新たな対中政策を繰り出す。これの繰り返し。

それが分かっていても、相場が上昇すると乗りたくなるし、下落すれば投げ売る。とかく近視眼的に考えがちだけど、今の相場は既に1ヶ月間揉み合ってるだけで、買っても無駄だった。

冷静に世界情勢を眺める必要

短期で株価のボラティリティで値幅を取る、という投資ならば、積極的に売買すればいいけれど、長いレンジで株価の上昇を狙うような投資は、かなり厳しいと思う。

今年の株式相場の難しさは、常に複数の懸念が同居してる事にある。単独で順に解決することもあれば、同時に悪化の方向へ向かうことも。

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そこにトランプ大統領のツイートという要素が絡むから、企業のファンダメンタルズに投資しても成果が得られない。さりとて100%センチメントで動くかというと、やはり需給には勝てない、みたいな状況になって、これがなかなか読めないし難しいんだね。

だったら、「株価=世界経済」みたいな視点で相場を見るしかないと思う。そういう意味では現在の相場はどういうポジションにあるのか考えてみると、大きな懸念は3つある。

米中対立の行方

この画像は産経新聞の記事をチャンネル桜で画像化したもので、引用させてもらった。昨年から米中貿易戦争になって、株式市場は大揺れに揺れたわけだが、こう見ると本当に僅か1年で目まぐるしく状況が変化してきたことが分かる。

それで、こうした貿易戦争の政策の合間にトランプ大統領のツイートが絡んでるわけで・・・これを「買い」で獲ることがいかに至難の業だったか伺える。

そして現在もこの真っ只中にあるわけで、今の株式市場は米中貿易戦争一色です。

これで米中ともに(ほぼ)全品、12月15日以降は関税が掛けられるわけで、それだけ考えても経済は悪化することは明らかだよ。

もちろん、株式市場というのは、今の株価が米中貿易戦争のこの要因をすべて織り込んでいる位置であるなら、「買い」という選択肢もあるかもしれないけど、とてもそうは見えないんだよね。

なぜなら、米中対立は今後ますます激化してゆくから。株式市場はこのところずっと楽観相場が続いていた。なぜ楽観出来るかと言えば、「貿易戦争」だけしか見ていないからです。

しかし、米中対立の本質は、米国の中国叩きであって、中国の経済力が相当に疲弊するまでは、攻撃を止めないから。

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それはこれまで議会を通過した各法案を見れば想像がつく。

NDAA 国防権限法 

毎年状況に応じて改正されてゆく国防のための予算執行権を国防省に与える法律。しかしNDAA2019は中国をターゲットとしていて、様々な制裁条項も含まれている。

IEEPA 国際緊急経済権限法

安全保障、外交、経済に対する、重大な脅威に対し、大統領の非常事態宣言後、金融政策を行う。

ECRA 米国輸出管理改革法(新ココム)

新ココムと言われ、中国製造2025のすべての項目に対し、輸出制限を行う。

議会がこれらの法律を可決し、NDAA、IEEPAはトランプ大統領の非常事態宣言で何時でも発動でき、またECRAは年内に施行を目指している。

こんなのが中国をターゲットにして続々を控えてるわけで、米中対立はまだ本線に至っていないと言えるかもしれないね。

ブレグジット

さてすっかり蚊帳の外に追いやられたブレグジットも、英国首相にボリス・ジョンソンが指名されたことで状況は一変したと言える。

とにかく「10月末には絶対にEU離脱をする」と宣言し、ハードブレグジットも辞さないということで、紛糾してる英国議会に釘をさした格好だよね。しかも、審議できないように1ヶ月間議会を休会するとして、エリザベス女王の許可を取ってしまった。

これで俄然、ハードブレグジット(合意なき離脱)の可能性が濃厚になったわけで、そうなるとEUは唯では済まなくなるし、ドイツ銀行はますます厳しくなる。

消費税増税

いよいよ10月から消費税が10%になる。既に消費は7月から厳しくなっていて8、9月の駆け込みさえ当てにできない状況だよね。

消費が悪化すると、当然値下げ競争になるし、今回ばかりは軽減税率適用範囲を巡って混乱しそうで、さらにはキャッシュレスも7PAYの失態で勢いを失った。

そうなると、今後の国内経済は相当に厳しくなるし、デフレは決定的になる。

日本経済を支えているのは実は内需であって、貿易ではないから、相当に厳しい展開になりそう。

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今後の相場展開

なので今の日本市場のポジションはかなり厳しいと言わざるを得ないと思う。少なくともこの秋に3つの懸念すべき状況が同居するわけで、ここから「年末の株高に向かって買い」と言うのは、余りに無責任というしかない。

しかし、もう少し考えるとこの先相場が急上昇する要因もないわけじゃないんだよね。長くは続かないにしても「年内上昇」もあり得る要因も一つだけある(と思ってる)。

株価上昇の条件

この先米国の株式市場がさながらバブルのような暴騰を演じる条件は、ズバリ「FRBの大幅利下げ」だと思う。仮にFRBが9月に利下げしてさらに年内の利下げを示唆するようなら、米国ダウは新値を取るだろうし、金融緩和路線をガイダンスすれば、さらに状況は好転することは確実。

なぜなら、内需主導の米国経済にとって現在足枷になっている、住宅と自動車の消費が回復することが大きいし、ドル安によって中国人民元安を食い止めるだろうし、中国制裁の効果はあがる。

もちろんそうなればなったでドル円は円高に向かい、日本市場にとっては米国市場ほど急騰は望めないかもしれないけど、それでも米国市場を追いかけることは確かだろう。

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株価下落の要因

これはもうあり過ぎるくらいある。もちろんトランプ大統領によるさらなる対中制裁も要因になるだろうけど、このまま人民元安に歯止めがかからない場合や、FRBが現在の政策姿勢を変更しない場合、ハードブレグジットと欧州金融危機、香港問題等々なんでもありだ。

とにかく今の地合いは差し詰め「地雷原」のようなものだ。数ある懸念のどれもこれもが、結構な破壊力を秘めてる。反面日本の経済政策は、消費税増税で逆行しているわけだから、当然ダメージは米国よりも大きくなるだろう。

なぜ「買う勇気」がないか

株価の変動要因には、需給もあるし個別銘柄の事情もるので、当然上昇する場面もある。しかし、経済状況はすでに天井を打って穏やかではあるけれどジワジワと下降し始めてるのは確か。

とにかく米中対立の影響がどこまで及ぶのかがまったく未知数である以上、中長期的な目線での「買い」はあり得ないというのが現在の株式市場の立ち位置だと思う。

第一今はまだ買う場面じゃないね。

悪材料を思い切り織り込むようなドカン、ドカン、と厳しい下げがきて、はじめて買う気になれるのかも。この在り過ぎる懸念を消化するのにはまだ時間がかかるだろうね。

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