株・師匠の教訓 4:上がると思ったら買ってください

株・師匠の教訓 4:上がると思ったら買ってください

師匠に教えていただいたことの多くは、株式投資のテクニック的な部分ではなく、株式投資をする上での心構えや考え方でした。実際に禅問答のような話を延々とすることもあって、時として疑問を感じながらの対応でした。

しかし、株式投資はメンタルに依存する部分が多いのは個人投資家であれば誰もが意識していることです。いま思い返せば師匠の言葉はすべてが役に立っているような、そんな気がしています。

株は何処で買っても間違いじゃない

私の株修行は、あらかじめポジションを建ててから師匠宅に向かうのが常でした。ですが最初の頃は師匠の批判が怖くてなかなか買いポジションが建てられません。

リーマンショックの急落からの戻り局面ではあったものの、約3ヵ月のリバウンド相場が終わりに近付いているようなそんな地合いでしたから、何処で買うか、と言うよりもどの銘柄を買うかと思案していた気がします。

ですから、何度かポジションを建てずにご自宅に伺うと、「手ぶらですか」と厭味のような言葉を投げかけられました。

「何を買っていいか、何処で買っていいか分からないので」と言い訳すると師匠は、「上がると思ったら買ってください」と言いました。

その時「なんていい加減なんだろう?」と憤慨したものです。そして次には「株は何処で買ってもいいんですよ」と言ってのけました。

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株が欲しいか利益が欲しいかの問題

株式投資をする人は、大別すると2種類だと師匠。株が欲しいか、利益が欲しいかのどちらかです、と。大きな仕手戦なども経験して、またM&A(昔は乗っ取りと言った)などの経験もある証券マンです。

そういう場合は利益と言うよりも目先株を買い集める、ということだったのかもしれませんが。

「個人でも長期で考える人は、目先の株価は気にしないものですから」と言うのも、ある程度は納得できました。

しかし、(自分も含めて)大半の投資家は、利益目的だという気持ちに変化はありませんでした。なので、師匠の真意が今一つ、理解できないままでした。

「利益ばかりを追い求める投資行動には大きな落とし穴があるのです」

怪訝そうな表情の私に、師匠はそんな言葉を投げかけてきました。そしてじっくりと真意をうかがうことになったのです。

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失敗すると自分の判断を否定する

利益を追い求める投資行動というのは、損失が出ると「自分の判断は間違いだった」「失敗だった」という具合に、必ず自分の投資判断を責めたり否定したりします。

じっくりとファンダメンタルズを調べて、また様々な角度から検討して投資を決定したつもりでも、株価下落という現実を目の当たりにすると、その判断は一気に崩れさることになります。

「そんなことはない」と思われるかもしれませんが、資金を失う、という結果はどうしても投資家をそういう思考に追い込むのです。

「利益を追い求める投資行動の当然の帰結」と師匠は言いました。

では、利益が出るとどうでしょう?

投資家は「自分の判断は正しかった」と自信を持つでしょう。その自信を持つと言うことがイメージになって、その後は必ずそのイメージが忘れられず「過信」に繋がるものだ、と師匠。

過信すれば大きな落とし穴が待っています。そして、その時には自信を一気に喪失し、また自らの判断を否定するようになります。

「カネ儲けを第一義に掲げる投資家は、所詮カネの増減には耐えられないものですよ。人間の弱さです」

「経験からですか?」と聞くと「その通りです」と答えてくれました。

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自分を否定したら勝てるはずがない

株式投資でなくても何事でも、自分を否定したら勝てるはずがないと思います。結果が裏目に出るたびに、都度自分の判断を否定したり悔いたりしていても意味がないどころか、ますますネガティブな思考に陥ります。

そうなると戦う前に、すでに負けが決まっているようなものですね。

だからこそ、師匠は「株が欲しいと思って投資してください」と言ったのでしょう。そすると、いささか極論になりますが、何処で買ってもその株が手に入る、という結果には変わりはないわけです。

百戦錬磨のプロでさえ、買ってから株価が下落する、というこは日常茶飯なのです。株をどこで買えばいいか、などと言うことに正解はないのかもしれません。その後の値動きはあくまで結果であって、そうなる理由もまたいくらでもある、ということをプロは知っているわけですね。

ですからプロは自分の判断を否定したりしないそうです。否定したら仕事、できませんからね。

上がると思ったら買ってください

「銘柄はいくつか見つけたんです」

「ほほう・・・」

「何処で買ったらいいかわからなくて・・・」

「この中で一番上がりそうなのはどれですか?」

「野村とトヨタは・・・」

そう答えると師匠は「上がると思ったら買ってください」とまた一言。

それが株式投資の原点なのだ、と思いました。

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