中身のない米中合意第一弾は日米中経済に影響はなし!?

中身のない米中合意第一弾は日米中経済に影響はなし!?

今回の米中合意第一弾は、すでに1年8カ月にわたって続いている米中貿易戦争の一区切りとしての意味はあったが、今回の内容が米国の投資家を落胆させたことはまず間違いない。ニュースからなんと他国間の合意であるにもかかわらず、日経平均¥598高という大幅上昇となった日本市場に比べて、米国市場は極めて冷静な見方をしている。

はしゃぎ過ぎた日本市場

米中合意がほぼ確定として伝わった12日の米国ダウは$220高、そして13日の日経平均は¥598高。米国市場が日本市場と同様のインパクトとするのであれば、13日の米国市場の上げ代は$380もあったはずである。ところが、米中双方から正式な合意内容が伝わると、$28,285まで上昇していたダウは上昇分をそっくり献上し、$28,135(前日比$3高)で引けてしまった。

理由は既に報道されていた内容以上の踏み込んだものは何もなかったという、所謂「材料出尽くし」の動き。一時は高値から約$260ほどの急落場面になったことからも、明らかに投資家は落胆したと思われる。

となると、¥24,023と高値をキープして引けた日経平均は、いかにもはしゃぎ過ぎた株価の位置と言える。そもそも、日経平均は過度な期待と楽観の上に形成された株であることは言うまでもなく、いかにも金曜の¥598高は、バイング・クライマックスを感じさせるに十分であって、東証一部の出来高もそれを物語っている。

米中合意の内容

今回の米中合意第一弾の骨子は次の通り。

(米国)

●15日からの関税引き上げを無期限延長。

●9月発動分お関税率を15%から7.5%に引き下げる。

(中国)

●知的財産権の保護を強化

●技術移転の強要を禁止

●金融サービス市場を開放

●人民元安誘導の抑制

●対米輸入を2年で2000億ドル(21兆円)増加

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この合意第一弾は、中国にとっては米国農産物の購入を中心とした合意であり、現在中国国内は、豚コレラによる豚肉の逼迫と高騰、大豆、トウモロコシ、等の高騰と飼料不足によって、厳しいインフレとなっている。代替輸入国としてブラジル、アルゼンチンを増加させているものの、米国からの横やりが入り思うに任せない状況に成っていた。

そして他の条項に関しては具体的に明文化される予定はなく、極めて玉虫色のまま具体的な進捗はなかった。しかし、ならばなぜ、ここまで紛糾していたのか、といえば合意内容を見る限り、理由が思い当たらないのだ。すでにトランプ大統領が合意は極めて近いとツイートしてから1ヵ月が経過している。

外交交渉込みの合意?

この間、中国は韓国に対してミサイル迎撃システム(サード)配備に関して執拗に韓国に撤去を要求していた。つまり中国は文在寅政権に対し、米側につくのか、中国側につくのか、という「踏み絵」をさせたと思われる。しかし、文在寅大統領は、明確な意思を示すことなく、「経済は中国に依存し、安全保障は米国に依存する」という優柔不断な態度のままであった。

米中交渉の最終段階で、米国は韓国問題に関して中国に何らかの要求をし、それに対して中国は何らかの態度を決めるまでに時間がかかったと、個人的には考える。

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米国は半導体関連の先端技術は韓国・サムソンからもたらされていると認識していて、明らかにサムソン潰しに政策的な舵を切っている。そしてそのことが日米の半導体株高の根拠になっているのだ。

韓国経済は米韓関係、日韓関係の悪化によって、既に崩壊はカウントダウン状況となっているわけで、そのある意味では戦後処理を中国と取り決めていたと見るのが正しいのではないか?

同様に北朝鮮に関しての何らかの取り決めも米中間で行われた可能性が高いと見る。北朝鮮は米国が「核放棄の代償を段階的に支払うことを要求」しているが、トランプ大統領は電撃的な板門店会談以降、一切の要求を無視し、度重なるミサイル発射に対してもコメントもせずに、じっと我慢していた。

それは、米国側の要求を北朝鮮が承諾するまで、忍耐の姿勢で臨んできたわけで、ここにきて12月を期限とする北朝鮮の要求に対しても応じる姿勢をみせないことで、金正恩はいらだちを隠せなくなっている。

北朝鮮にとっては12月期限切れとなれば、いままでの米朝交渉は白紙に戻す以外にないわけで、そうなると韓国も含めて朝鮮半島情勢が大きく動く可能性が高い。

その際の中国の出方が、米中合意の裏で交渉されていたと個人的には考えている。

日本経済への影響

今回の米中合意第一弾の日本経済に対する景況は、ほぼ皆無と言ってもいいレベルだと思う。どの合意内容を考慮しても、日本企業が潤う、というのは合意の裏で進む韓国・サムソン潰しくらいのもので、半導体製造装置、検査装置関連は現実には受注は回復していない。

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一部、5G関連で半導体の増産傾向となってシリコンウエハ等原材料部門は活況と伝えられていて、サムコや信越化学は好調らしいが、東京エレクトロンやアドバンテストは期待外れの可能性も高いと見る。

また、5Gと自動運転に関する電子部品は好調であり期待も先高観もあるわけでが、これらに米中合意の恩恵はあるわけではない。

つまり、米中合意への期待を材料として、日経平均¥24,000を回復してしまった日本市場は、米国ダウとの連動性が大いに危惧される場面となった。調子に乗って、国内経済の悪化や足元の企業業績の悪化を無視して、上昇を続けてきてしまった。

そして合意内容が明らかになったことで、足元を見れば、梯子が外された状態であることに気がつくような状況にある。ここからは日米株式市場の連動性が徐々に失われるだろう。

日米中の経済に影響は出ない

合意内容からして、日米中の経済に即効性もあるものは何もなく、株式市場が踊った理由を見出すことはできなかったと思う。少なくとも米国経済にとって、米中対立の緩和という精神的な安心感はもたらしても、企業利益や投資家のゲインが増えるものは何もなし。

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また中国経済は、現状悪化に歯止めがかかっていないし、今後も悪化は止まらないだろう。それどころか、中国は今回の合意でドル準備高を吸い取られる。これは米国の対中政策の一環でもある。

そして、日本経済は、このままでは輸出企業でさえ、中国と心中の可能性がある。そもそも、10月の消費増税の影響は、思いのほか深刻であるからこそ、24兆円という景気対策を安倍政権は打ちださざるを得なかった。2020年は五輪イヤーであるものの、国内経済は瀕死なのだ。

株式市場反転の狼煙

ソニー、トヨタ、メガバンク、野村、といった日本市場を牽引した主力銘柄、そして日経平均自体、金曜に天井を打ったことを示唆する、日足となった。また、日本市場の出来高も、天井を示唆する大商いとなったことで、来週は調整入りとなるはずだ。主力銘柄にとっては年末相場はこれで終了したと言えると考える。

仮に、日本市場の強さが本物であるならば、年末に賭けで小型株の物色が本格化する可能性も十分にある。しかし、マザーズやジャスダックの主力銘柄に関しては、出尽くし相場に巻き込まれるかもしれない。

いよいよ長かったトランプ・センチメント相場も一旦は正常化するかもしれない。

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