ウクライナ情勢急変でマーケットは右往左往:緊張感MAXの週末

ウクライナ情勢急変でマーケットは右往左往:緊張感MAXの週末

今夜の米国市場もまた厳しい下げに見舞われている。現時点(3時50分)でダウ▲$450、NASDAQ▲310p、S&P▲72pと大幅即落の様相。しかもWTI原油は$94をぶち抜いて(北海ブレントは$96ぶち抜き)きた反面、米国債10年物金利は2.062%まで上昇後急落して1.975%。

短期国債金利も低下しているので、明らかに株式を売って米国債を買うというリスクオフの相場模様になっている。そうした中、日経平均CFDは、一時\27,000割れの¥26,972まで、という厳しい週末だ。

株式市場の誤った方向性

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米国市場の相場動向を見ていると、今の株式市場に対する考え方、株価誘導の仕方は、明らかに間違っていると思う。つまり、インフレが高伸している現状で、株価が見ているのはFRBの金融政策だけ、それも今後どのように利上げを実施するのか、という事だけ。インフレ率の上昇を受けて、FRBが3月に0.250pから0.500pに引き上げるかもしれない、またはFRBは年7回(すべてのFOMCで毎回利上げ)をするのではないか?ということでのみ、右往左往している。

いまの株式市場が如何に金融に依存した相場形成をされているのかが分かる気がするけれど、本来株式市場というのは金融政策はもちろんだが経済の動向を受けて企業業績が将来的にどのような影響をうけるか?が一番の焦点のはずで、すでの今の相場はそうした視点を完全に失っていると思う。

例えば1月の雇用統計が良好だった要因を「経済好調とみるかインフレで生活が厳しくなっているとみるか」で経済の様相は大きく変わってくる。もちろん、7%以上のインフレとなれば後者に決まっているのだが、いつものようにウォール街は解釈を捻じ曲げて企業決算と掛け合わせ、戻り相場を演出しようとしていた。

がしかし、今夜発表の2月ミシガン大学消費者態度指数は67.5のコンセンサスに対して61.7と大幅に悪化。この指数は消費の先行指数としての精度が十分にあるもので、2月の米国消費がますます冷え込んでいることを物語っている。前年同月比7.5%というCPIが発表された後だけに景気の先行きに懸念が生じることになるのは当然だろう。

なので、この2日間でダウが▲$900しようが▲$1000しようとも、戻り分を考えると当然なのかもしれない。

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ウクライナ情勢の緊張拡大

いま、米国は自国民のウクライナからの全員出国を勧告したが、欧州各国も追随したし、日本も同様に勧告している。そして今夜なんと米国バイデン政権が「プーチン政権はウクライナ侵攻を決定した」との情報を出した。同時にホワイトハウスは「ウクライナ在住の国民は速やかに退去」という強い声明を発表した。

今夜の米国市場の急落と、米国債金利の急落、そしてWTI原油の高騰、コーン、大豆、小麦といった穀物の急騰は、この発表が原因なのだが、ホワイトハウス報道官は「プーチン大統領が最終決定をしたと言っているわけではない」と情報を否定し、大統領補佐官も「ロシアが最終決定を下したとは断定せず」と否定に躍起になっている。

しかしホワイトハウスは正式に「ウクライナ在住の国民に対して48時間以内に退去を」と正式に発表するとともに、「ロシア軍、ウクライナ国境で10万超増強」という事実も発表している。

プーチン大統領は現在ロシア軍の半数以上の20数万の兵力を厳冬のウクライナ国境に集結しているのだ。

ここでプーチンがロシア大統領として、ウクライナに侵攻する理由を解説したテレ東の動画を掲載します。この豊島晋作というキャスターは、現在のTV業界でピカ一の才能をもった人物で、本当によく勉強しているし素晴らしいと思います。少々長い動画になりますが、ぜひ視聴しておくと役に立つと思います。

いま、ロシアは窮地に立っていることは間違いなく、プーチンは苦しい決断を迫られているのは間違いないと思う。個人的にこうした軍事侵攻を肯定しているわけではないけれど、是非で論じることが出来るような単純な問題ではないということは理解しているつもりです。

バイデン大統領はほどなくしてプーチン大統領と電話会談を行うとホワイトハウスの発表があったけれど、これまでの経緯からして解決するとも思えないし、事態は決定的になる可能性もあると思う。馬鹿なホワイトハウスは「西側諸国は過去数年で最も団結」という至らないコメントを出しているが、バイデン政権の無能ぶりを露呈した極めて無配慮なコメントだと思う。米国には「窮鼠猫を噛む」という諺はないのかな?

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ウクライナ有事勃発ならばFRBはどう動く?

もしも近々のうちにウクライナ軍事侵攻が行われたならば、原油価格、天然ガス価格は暴騰すると思うし、最大の懸念は穀物価格の暴騰で、これがもちろん米国のインフレを急加速する可能性がある。今のロシア軍の体勢からしてもウクライナ侵攻は全面戦争に近いものになり、資源価格、穀物価格の主導権はロシアが握ると言える状況に陥る。となると、価格暴騰は一過性では済まない可能性も十分にあって、いかなFRBとてこの状況を見過ごすことは出来ないのではないか?と思う。

1月CPIが前年同月比7.5%と発表されてから、当然FRBでは金融政策について会合を持っているだろう(そういう情報は出てきている)。その席では3月0.500pの利上げは否定的だったとされるが、常にFRBは有事の際には保守的な行動をとる。

思い起こせばサブプライム危機に陥り、大手証券の一角であったベアスターンズの破綻を経てリーマンブラザーズが破綻危機を迎えたとき、救済する銀行が現れず、というよりもFRB議長のバーナンキが金融再編のリーダーシップを取り切れず破綻させたことが、その後の大惨事を招いたというのは有名な話。バーナンキは各大手行とギリギリの交渉をしたけれど、各行の条件はFRBまたはね米国政府が債務保証を付けてくれ、というものだった。しかしブッシュ政権はこれを拒否し、時間切れで破綻という結果になったわけだが・・・。

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しかし、リーマンを破綻させた影響があまりにも大きく、リーマンよりの桁上の債務を抱えるAIG(米国保険最大手)や米国の象徴であるGMを公的資金の注入と米国政府保証を付けて、さらには法律改正して天文学的なCDO、CLOといったデリバティブ損失までも救済したことを考えると、FRBに対して初動的な対策は全く期待できないと思わざるを得ない。

FRBは合議制なだけに、有事のシュミレーションが出来ていないし、合意に時間がかかるので機動的に動けないという欠点がある。

従って今回、ウクライナ侵攻になってもFRBは動けないだろうと思う。

緊張感MAXの週末

こうしたウクライナ情勢の急変ということは、マクロン大統領が提案した妥協案をプーチン大統領が蹴ったと見るべきで、その連絡でホワイトハウスは一斉に情報を出したということだろう。そしてプーチンーバイデンの電話会談では、NATOの東方拡大をしないと確約するような時間を要する話にはならないと思うし、せいぜいウクライナ在住の米国民の退去時間を考えてくれ、程度だろう。しかしその席で、SWIFT(ドル国際決済システム)から締め出すようなことを示唆すれば、纏まるものも纏まらなくなる。

こうする間にも米国債への資金退避は続いている。現時点(5時40分)で米国債10年物金利は1.930%まで下落した。完全なリスクオフだ!