米中交渉:トランプ大統領が激怒してツイートした理由
- 2019.05.09
- 海外情勢
貿易や知的財産権等に関する米中交渉は、5月5日の時点では交渉事項のほぼ90%が合意に達していました。しかし、6日になって突然、トランプ大統領は「10日に2000億ドル相当の中国製品に対し、関税を現行の10%から25%に引き上げる」とツイートし、世界の株式市場は同時株安に見舞われました。
それから3日目の9日になって、トランプ大統領の激怒の理由が分かってきました。
貿易協定草案から法改正の約束を消した!
中国は、4月末から始まった米中閣僚級交渉で、劉鶴副首相らと事前に合意していた、「協定内容を履行するために法改正を行う」という部分をすべて削除して(合意案を)提出してきました。
今回の交渉では中国側の国内法改正が必須で、それが行われないとなると協定そのものの意味がなくなってしまい、中国国内で法的効力のない唯の合意文書となってしまいます。
これに激怒した、ライトハイザー米通商代表部代表は、内容を確認の上トランプ大統領に報告し、トランプ大統領はその場で激怒してかなり感情的になってツイートを発信しました。
関税引き上げに関してはライトハイザー氏以外に事前に知らせずに決めてしまったために、クドローNEC委員長やムニューシン財務長官はメディアのインタビューで曖昧な回答しかできなかった、と言うのが経緯です。
最初に激怒したのは習近平だった
ではなぜ、合意草案から「法改正を伴う部分」を削除してしまったか?と言う疑問が残りますが、実は劉鶴副首相が4月以降の米中交渉において習近平の了解を得ずに独断で進めたことが原因です。
6月のG20も近くなって、改めて日米首脳と会わねばならない習近平は、合意内容の確認を劉鶴副首相に求め、その内容があまりに一方的なものと激怒し、劉鶴副首相を罵倒したということらしいです。
流石に劉鶴副首相も急きょ合意草案を書き変えて(交渉が暗礁に乗り上げるのを覚悟で)米側に提示。それを突き付けられたライトハイザー代表も激怒。交渉の責任者である自らのクビも危ないということで、即刻トランプ大統領に報告した、という経緯です。
トランプの疑心暗鬼
米中交渉は当初2月末の期限を切ってスタートしました。しかし、中国側からの延期要請を受けて3月末~4月上旬の合意へというスケジュールが一旦は組まれた訳ですが、これもまた延期。そのためトランプ大統領は習近平との首脳会談は行わないと宣言し、4月中の合意がリミットであると言うことになりました。
そうした中国側の態度をトランプ大統領は「合意意思のない引き延ばし作戦」と感じているとの報道もありました。来年は大統領選挙で再選できなければ、1年半後には交渉は中国有利になります。またたとえ再選されたとしても、確実に5年半後には任期が切れ、その時でも中国の習近平体制が変わらないとなると、ダラダラと引き延ばすことに意味が出てきます。
そのことに疑心暗鬼であったからこそ、「遅すぎる」というツイートとなって出たのでしょう。
トランプ大統領にとって、6月の民主党大統領候補の討論開始から、いよいよ来年の大統領選挙に突入することになります。トランプ大統領はそうした政治日程を考慮して、早期の米中交渉妥結して株式市場を安定的に上昇させたい意向がありました。だからこそ、トランプ大統領はFRBに対し、強硬に利下げ要求を行っていると言われています。
しかし、米中交渉がいつになっても目途が立たず、最終局面で中国が交渉を振り出しに戻すような態度に出てきたことで激怒に拍車がかかった、というのが真相ですね。
米中交渉早期妥結は絶望的?
これで、9日の再交渉で中国側が元通りに「法改正部分」を戻したうえで、さらなる妥協をしない限り、時間切れで25%へ自動的に発動されることになります。米側の発動は10日0時1分と正式に通告が行われました。
なので米中交渉のタイムリミットは、米国時間の9日23時59分と言うことになります。
しかし、現実には各種手続きに数時間を要するために、タイムリミットは前倒しに考えるべきでしょう。
トランプの選挙戦略は民主党不正を暴くこと
間もなく民主党は大統領選挙に立候補を表明した20名以上の党内候補者で、公開討論を行います。そして約1年間の予備選がスタートします。
ロシアゲートで散々苦しめられたトランプ大統領は、ロシアゲートにおける民主党ヒラリー氏の謀略等を訴追する構えを見せていて、そのためにも中国問題はできるだけ早期に決着しておきたいところです。
まとめ
合意直前で暗礁に乗り上げた米中交渉は、米中両国トップの面子の問題へと発展してしまったことで、9日の合意は非常に厳しくなったと思います。
借りに合意したとしても、現行関税は維持されるでしょうし、また決裂の場合には残りの3000億ドル以上の中国製品に対し、25%関税を時間を置かずにかけることも十分に有り得ることだと思われます。
ちなみに、安倍首相は今回の事態もトランプ大統領から意見を求められた、と言うことです。もちろん、安倍首相は・・・。
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